皆さんごきげんよう。IWOLIです。
「初心セサイザー」シリーズの2回目、
今回はシンセの構造についてお話しします。
シンセって一見すると色んなツマミ・スライダー・パラメーターだらけで、
どこがどうなって音が鳴るのか、初見じゃ分からないですよね…
何にも分からないからプリセットしか使えない。
プリセットに思い通りの音が無いからやめちゃう…
そんな貴方のために!
そもそもシンセはどういう風に音が合成されて、
どこを弄ればどんな音に鳴るのかを説明していきます!
こちらの記事は前回の記事で導入した、
”Vital”を使用して解説していきます。
今回は他のシンセにも応用できる内容が主ですが、
同じものの方が分かりやすいと思われますので
まだの方は以下を参考に導入してみてください。
Contents
シンセの基本構成
まずはシンセを構成するパーツを紹介します。
一般的なシンセは主に以下のようなパーツで出来ています。
- オシレーター
- フィルター
- モジュレーター
これ以外が含まれるシンセも多くありますが、
最低限たるこれら3つによって基本的な音が作られています。
それぞれの役割を見ていきましょう。
オシレーターとは?
まずは音作りの始まり、「オシレーター」から。
こちらはシンセの音を発する部分です。
ここでどんな音色の波形を、どんな音程で出すかまでを決めます。
フィルターとは?
オシレーターで作られた音が通り、
「フィルター」という字義通り、音の一部を濾す部分です。
「音を濾す」という事の意味は後程!
モジュレーターとは?
オシレーター、フィルター、またはその他のパラメーターに
変化を加える部分が「モジュレーター」です。
緩やかに鳴り始めたり、
鳴り始めからすぐに減衰したりなど、
時間と共に変化させたい時に使います。
基本構成のまとめ
非常にざっくりですが、
この部分を理解するだけでもかなりいろんな音が作れるようになります。
まだイメージしづらいかと思いますので、一つずつ解説していきますね!
オシレーター
まずはオシレーターの構造を詳しく見ていきましょう。
Vitalですとこちらの赤枠部分です。
左に薄く”OSC 1”と書かれていますが、このOSCがオシレーターの略です。
真ん中にギザギザがありますが、ここに表示された波形を発します。
オシレーターから音を出してみる
試しに鳴らしてみましょうか!
MIDIアイテムにノートを置いて再生したり、MIDI鍵盤で弾くと音が鳴ります。
Vitalの一番下の鍵盤を押しても鳴ります。
こんな感じに鳴ります。
この波形はノコギリの刃の様であることから、
「ノコギリ波」や”Sawtooth wave”と呼ばれます。
長いので多くの場合、「Saw波」とだけ呼ばれます。
デチューン・ユニゾンで分厚く!
さて、まーまーつんざくような音を出されて耳が痛いかと思われますが、
ここでデチューンというのを試してみましょう!
Vitalでは”UNISON”と書かれている部分で調節できます。
ここの”1v”の文字、これは1Voiceの略で、
左の波形をいくつ重ねているかを表します。
これを増やしていくと…
なんということでしょう!
あれほど喧しかった電子音が、実にゴージャスなシンセサウンドに!
これはUNISON内の右側にある20%の幅で、若干ピッチがずれた音を
16vの場合は16音重ねている状態です。
それだけ聞くと更に五月蠅くなりそうですが、これが不思議とつんざく感じが減って
むしろ聴きやすくなるのです…!
この若干ピッチをズラすことをデチューンと言い、
(ピッチはズレていても)ほぼ同じ高さの音を重ねることをユニゾンと言います。
そして、デチューンされた複数のSaw波をユニゾンさせた、このゴージャスな音の事を
Super Saw(スーパーソウ)と呼びます!
波形を変える
別の音も聴いてみましょうか。UNISONを元に戻しておきます。
波形上部にある、
< Init >
という表示を押すと波形を変えられます。
左右の矢印では前後に送り、真ん中を押すと一覧表示されます。
※一覧表示の場合
“Init“から右を押すか、一覧から”Basic Shapes”を選びましょう。
ノコギリ波が、丸っぽい奴に変わりました。
鳴らしてみましょう。
さっきよりつんざく感じが減り、「ポーッ」という、丸い印象になりました。
こちらの形状は”Sin wave”、「サイン波」と言われます。
そこ!数学トラウマとか言わない!大丈夫です!
数学はあんまり出てきません!(全くないとは言っていない)(知らなくても大丈夫)
ここでは最も単純な波形=サイン波とだけ覚えれば大丈夫です!
ウェーブテーブルシンセって凄い!
また先ほどのInit(Initial、最初の、という意味ですね)との違いとして、
このBasic Shapesは「Shape”s”」とある様に、複数の波形が含まれています。
それに変えてみましょう!
波形が書かれている部分、またはその右のスライダーを上下にドラッグしましょう。
すると…?(鳴らしながら波形を変えていきます)
どうでしょうか?どんどん音色が変わっていきますね!
最初の方は大人しく、途中からつんざくような大きな音になりました。
Vitalはこうして、複数波形のまとまったセットを選び、
その中から更に使う波形の部分を選択して音色を決定していきます。
ウェーブテーブル・シンセ(Wavetable Synthesizer)と言います!
加工前の元素材なので、当然ながらここで何を選ぶかは音の性格を大きく左右します。
サイン波なら大人しく、Saw波(ノコギリ)なら派手になる、などですね。
この違いの要因は、その音が含む倍音の違いによるものです。
お次はフィルターを使い、その倍音が生む差をご説明します!
フィルター
先ほど、フィルターは音を濾す装置と説明しました。
ここで何を濾しているかというのが、先ほど説明した倍音です。
一つの音色の中には、基音と呼ばれるものと、倍音というものがあります。
基音とは、その音の中で最も低い周波数の音です。
逆に倍音とは、基音よりも高い周波数の音です。
そう、この世のほぼすべての音は、実は複数の周波数を含んだ音、なのです!
先ほどの単純な波形であるサイン波だけが例外で、倍音を一切含みません。
フィルターの説明の前に、そもそもの倍音の話からしておきます。
そもそも倍音って?
試しにサイン波とSaw波の倍音の違いを見てみましょう。
画面上部の”ADVANCED”タブをクリックすると、
このような画面に切り替わります。
そしてADVANCEDタブの下の方のこの部分!
ここに、今このVitalで鳴らしている音の周波数分布、
即ち基音と倍音がどのようになっているのか表示されます。
「スペクトラムアナライザー」と呼びます
では再生しますよ!
どうでしょう??サイン波は山が一つなのに対し、
Saw波は、一番左は同じ位置に山がありますが、そこから右にかけてずっと山が続きますね!
サインとSawの間にはこういった高い音がどのような分布で鳴っているかという違いがあるために、
サイン波は大人しく、Saw波は派手な音なのでした。
フィルターで倍音を濾す!
お待たせしました。フィルターについて解説します!
先ほども話した通り、フィルターとは倍音を濾す装置です。
Vitalではここにあたります。
グレーアウトしていて見えにくいですが、
これは初期状態ではOFFになっているためです。
左上の丸を押すと…
このように、フィルターが目を覚まします!
このフィルター部分のオレンジ色になっている部分が、
フィルターを通り抜けてきて実際に鳴る音を表しています。
※対応のイメージ図(ちょっと分かりにくいかも…)
試しにこのフィルターで、Saw波の倍音を濾してみましょう!
いかがですか!?なんかシンセでよく聴く気がする変化がしますでしょう!?
操作方法は動画でマウスが動かしている通り、
画像の端にあるスライダーのドラッグや、
画像部分を上下左右にドラッグする事で動かすことができます!
めっちゃ直感的ですよね…Vitalが大好きな理由の一つです。
フィルターを使ってもほとんど効果がありません。
そのためこのような方法で音作りをする場合は、
基本的にSaw波など倍音の多い音を使います。
続いてフィルターは自動で動かして、
スペクトラムアナライザーで、倍音がどのように変化したかも見てみましょう。
見ての通り、倍音の高い方がフィルターで削られ、
動きに伴って左右に(周波数で言えば上下に)動いてますね!
こういったフィルターによる変化を使って、波形選びだけでは作れなかった
丁度いい倍音の構成を作っていきます!
今回使ったフィルターは最も基本的なローパスフィルターといい、
LPと略されます。
文字通り、低い音のみを通すフィルターという事ですね。
逆に高い音が削られるという意味で、ハイカットと言う事もできます。
さて、オシレーターで基本音色を選び、フィルターで倍音を削る、
それは分かりましたが、
さっきの動画で使ったように、自動で動かすにはどうすればいいのでしょうか?
そんな時に使うのが次の装置、モジュレーターです!
モジュレーター
シンセの基本、その最後となるモジュレーター!
こちらで、今までは一定の音しか鳴らなかったものに、
時間変化を与えられます!
Vitalではここ!
右側の大部分すべてがモジュレーターです!
※正確には右下は違います…ご了承を…
3種類ありますがざっくり説明すると、
- ENV:エンベロープ-鳴った時に一度だけ動く
- LFO:エルエフオー(そのまんま)-周期的に動き続ける
- RAND:ランダム-不規則に動き続ける
という感じです。
今回は基本という事でENVのみ説明しますね。
これは発音開始時から終了までに、一度だけ再生されるモジュレーターです。
一番上のENV 1は最初からオシレーターの音量を変化させるよう設定されているので、
試しにこちらを動かしてみましょう!
どうでしょう?フィルターのような倍音変化ではなく、
鳴らし始めてからどのように音量が変化するか、が変わりましたね。
この要素も、音色を決定する上では非常に重要です。
例えばトランペットやフルートなどの管楽器なら、
息を吹き始めてからは息が切れるまでほぼ一定の音量が出せますが、
ピアノやギターなどは弦の振動が徐々に減ってしまうので、
ずっと鳴らすことはできません。
またバイオリンなどに顕著な弾き方として、
鳴り始めを優しく小さくする場合もありますね。
このような音量の他、先ほどのフィルターの動きなど、
様々なパラメーターに変化を与え自在に音色を操るのがモジュレーターです。
ここはまだまだ奥が深く、説明し出すと長くなってしまうので次回に持ち越しますが、
このような機能がVitalは3種類用意されていることを覚えておいてください。
Vitalは動画の通り画像や図の中のポイントを操作できる上、
現在どのように音が鳴っているのか、非常に分かりやすく出来ています。
歴史の浅めなシンセではありますが、このとにかく直感的で分かりやすい、という特徴が、僕がVitalを初心者に推す大きな理由です。
まとめ
今回は以上となります。お疲れ様でした!
最後にシンセの音作りの流れを簡単におさらいします。
- まずはオシレーター(OSC)で、これから加工する音の原型を決めます。
- そしてフィルター(FILTER)で、倍音を削って選び抜きます。
- 更にモジュレーター(ENVなど)で、様々なパラメーターに変化を付けます。
簡単にではありますが、これだけでもシンプルな音を作る事は可能ですので、
是非手元のシンセで試してみてください。
Vitalは何度もお伝えしている通りにとても分かりやすく出来ていますし、
今回お教えした通りに操作すればかなり遊べると思います。
もちろん、Vital以外のシンセでも多くのシンセで応用が効く内容ではありますので、
別のシンセを持っていて使いこなしたい方はそちらで音作りしてみるのもいいですね!
ということで今回はここまで!
次回は先ほど説明を端折ったモジュレーターについて、
更に詳しく解説していきますよ!
コメントを残す