初心者のためのシンセサイザー基礎編③ | モジュレーターの基本

皆さんごきげんよう。IWOLIです。

初心セサイザー」シリーズの3回目、

今回はモジュレーター3種類、エンベロープ・LFO・ランダムについて解説します。

前回の記事で、オシレーターの音量を変化させていた部分ですね。

シンセを扱う上でもほとんどのシンセにおいて登場する必須項目ですので、

この記事で学んで是非役立てていただければと思います!

そもそものモジュレーターの基礎は前回の「基礎編②」で解説していますので、

2回目をまだ読んでいない方は以下から先にご覧いただくことをお勧めします!

初心者のためのシンセサイザー基礎編② | シンセの構造

モジュレーターの基礎おさらい

まずはモジュレーターそのものをおさらいしておきましょう。

モジュレーターとは、シンセの各パラメーターに時間変化を加える物です。

時間変化とは例えば、

音量・フィルターの動き・ピッチ

などを音の鳴らし始めから終わりにかけて変えたり、

周期的に揺らすといった加工ができます。

これにより、オシレーター・フィルターだけでは出来なかった表現が可能になります。

Vitalには以下のようなモジュレーターが搭載されています。

  • ENV:エンベロープ-鳴った時に一度だけ動く
  • LFO:エルエフオー(そのまんま)-周期的に動き続ける
  • RAND:ランダム-不規則に動き続ける

試しに、ENVで音量の変化を加えたのがこちらです。

音量の変化のカーブが変わるだけでも、全然違う表現が出来そうですね!

Vitalなど多くのシンセでは、このモジュレーターを色々なパラメーターに当てはめる(アサインする)ことで、表現豊かな色んな音色を作っていきます。

モジュレーターその①:エンベロープ/ENV

まずは前回からも出ているエンベロープENV)から。

これは音の鳴り始めで一度だけ再生されるモジュレーターです。

鍵盤を押し始めてから放すまでの挙動を決めます。

先ほどの動画の通りですね。

Vitalではこの部分です。

ほとんどのシンセには搭載されている機能ですので、

特に基本的な部分は多くの場合で応用が効くと思います。

特にオシレーターの音量を決めるENVは「アンプエンベロープ」として話される事もありますね。(VitalではENV 1が常にすべてのオシレーターのアンプエンベロープとなっています)

詳しく構造を見ていきましょう。

ADSRという概念

ENVを理解する時に欠かせないのがADSRです。

この4文字は、ENVの基本となるパラメーター

  • ATTACK
  • DECAY
  • SUSTAIN
  • RELEASE

のイニシャルを取った物です。

Vitalにはそのまま書いてあって分かりやすいですね。

「残りの二つは」と思われるかと思いますが、

こちらはVital以外だと無いこともあるので後程解説します。

ATTACK

こちらは音の鳴り始めから、どれだけの時間をかけて最大値に達するかの時間を決めるパラメーターです。

音量のATTACKを変えるとこのように変化します。

ミスで映り込んだ左の鍵盤が邪魔ですね…すみません

DECAY

こちらは少しややこしいですが、

最大値になってから、次のパラメーターであるSUSTAINの値まで下がる時間を決めるパラメーターです。

その都合上、SUSTAIN最大だった場合、DECAYを変えても何も変わりません

SUSTAINが最大ではなかった時に、どれだけ尾を引いて音が減衰(Decay)していくかを決めます。

次の項目で確かめてみましょう。

SUSTAIN

こちらは、最大値になってからDECAYの時間をかけて下がっていく目標値を決めるパラメーターです。

これにより、長く伸び続ける音か、だんだん小さくなる音かが決まります。

そしてだんだん小さくなる場合に、どれだけの時間をかけるか決めるのDECAYということですね。

実際に操作するとこうなります。

冒頭部分のようにDECAYだけを変えても変化はありませんが、

SUSTAINも下げると音量の変化の仕方が変わるのが分かりますね。

また、DECAYとSUSTAINは一心同体なので、Vitalでは画像部分のポイントを操作することで、

二つのパラメーターを一気に操作できます。

つくづく素晴らしいシンセですね。

RELEASE

こちらは見た目だと分かりにくいですが、

音が鳴ってSUSTAINの値に達した状態で、

鍵盤を放してから値がゼロになるまでの時間を決めるパラメーターです。

試しにRELEASEのみを弄ってみましょう。

下の押していた鍵盤を放す瞬間に注目!(というより傾聴?)

RELEASEを大きくすると、鍵盤を放した(丸マーク部分がブラックアウトした)瞬間から時間をかけて音が減衰するようになりましたね。

といってもこれだけだと、SUSTAINをゼロにしてDECAYを変えた状態と同じに思えますよね?

という事でその比較動画がこちら!

どうでしょう違いが分かりましたか?

RELEASEが長い場合は、鍵盤をすぐに放してもしばらくは音が鳴りますが

RELEASEが短く、DECAYが長い場合、鍵盤をすぐに放すとすぐに音が消えます

(鍵盤を押し続ければRELEASEが長い場合と同様になる)

そして、DECAY・SUSTAINともに小さく、RELEASEが長い場合は

押し続けるとすぐに鳴り止んですぐに放すと長く音が鳴る

不思議な鳴り方をする音になります。

最後のパターンを使う事はあまりないと思いますが、

バーっと鳴らして止めたい時はすぐに止まるキレの良い音:RELEASE短め

しばらく余韻を残す響き渡るような音:RELEASE長め

と覚えておくと良いでしょう。

その他のパラメーター:DELAY・HOLD

さて、先ほど省いた項目です。

まずDELAYDECAYと一字違いでややこしいですが、

鍵盤を押し始めてから値が上昇を始めるまで遅延時間を決めます。

音量にアサインしていた場合、ATTACK徐々に大きくなりましたが、

DELAYは音が鳴り始めるまでの時間を決めます。

そしてHOLDは、

最大値からDECAYの時間をかけ減衰を始めるまでの時間を決めます。

つまりHOLDをあげた場合、DECAYが短くSUSTAINが小さくても、

HOLDの時間分最大値を維持します。

動画で一気に2項目とも確かめてみましょう。

DELAYの方は見た目に分かりにくいですが、

鍵盤を押してから鳴るまでが遅れているのが分かるでしょうか?

またHOLDは、それを伸ばした分だけ減衰が遅れていますね。

とはいえ実際の運用では、

DELAYを設定しなくても弾くタイミング(MIDIノートの位置)で基本は調整可能ですし、

HOLD無しでDECAYとSUSTAINでの減衰を利用した方が自然に聴こえやすいと思うので、

特殊な効果音等を作りたい場合以外ではあまり使わないパラメーターだと思います。

ENVのアサイン方法

既にかなりガッツリ説明してしまいましたが、

このままでは音量しか変化させられません。

もっと色んなものを動かすにはどうすればいいか?

ここではそんなENVのアサイン方法を説明します。

Vitalはこれもとても簡単です。

マウスカーソルを”ENV”と書かれている部分の下に持っていきましょう。

するとこんな感じでカーソルのようなものが現れます。

ここからドラッグしていくと…?

このように色んな所が緑色に光ります!

この光っている部分がENVなどのモジュレーターをアサインできる項目です。

試しにENV1をフィルターの下のバー、カットオフ(Cutoff)にアサインしましょう。

いかがですか!?

如何にも「ザ・シンセ!」な音になりましたね!!

典型的なシンセサウンドの多くは、このENVかLFOで、

音量・ピッチ・フィルターカットオフ

の3項目を中心に動かして作られる事が多いです。

また、アサインされたパラメータの付近にはこのような円グラフみたいなものが表示されます。

これは「モジュレーションアマウント」といい、モジュレーターによる変化量を決められます。

試しにこれを変えてみます。円グラフ部分から上下にドラッグする事で増減します。

このように、上にあげてプラスにすれば変化量は大きくなる一方、

マイナスにすれば逆側からせり上がる動きに変わります。

複数のENVをアサインする

とはいえ今のままでは問題があります。

現在ENV1のみをアサインしていますが、

このままではアサイン先の動きと同様に音量も減衰します。

これで良い場合は問題ないですが、

「フィルターが閉じても音はしっかり鳴ってほしい!」

という時に困ります。

その場合はENV2以降を使いましょう。

ENV2をクリックすると、何も触っていない初期状態のENV2に切り替わります。

こちらを編集して、またフィルターにアサインしましょう。

ただこのままでは、ENV1と2が両方アサインされています。

敢えてこうすることで過剰にフィルターを動かすのもいいですが、

今回はフィルターをENV2のみで動かし、ENV1は初期状態にすることで、

「音量は一定でフィルターが閉じていく音」を作ります。

一度アサインしたモジュレーションを消す場合、円グラフをダブルクリックする事ですぐに消せます。

動画冒頭ではENV二つでモジュレーションしていたのを、

ENV1のグラフを消し、形も元に近づけることで、

「音量は一定でフィルターが閉じていく音」が完成しました。

ダブルクリックは他のパラメーターも初期化する事が出来るので覚えておきましょう。
またダブルクリック以外に右クリックで表示される以下の項目を選択しても初期化できます。

パラメーターの場合

モジュレーションの場合

まだ色んな事が出来ますが、一旦はこれくらいにして次に行きましょう!

モジュレーターその②:LFO

次にLFO、こちらは基本的に周期的なモジュレーションをする機能を持ちます。

こちらもほとんどのシンセに搭載されていると思います。

Vitalではここ!

こちらはENVとは違い、発音中は自動的に左から右へと進んでいくだけなので

幾らか理解はしやすいと思います。

早速アサインしてみましょう!方法は同じくドラッグアンドドロップ

今度はピッチにアサインしていきます。

どうでしょう?アサインする事で、LFO1の山(LFOカーブ)に合わせピッチが上下しますね。

そしてこのLFOの強みは、

速さ・カーブの形状・周期の挙動など

動き方かなり自在に変化させられることです!

※試しにテキトーに弄っています。

色々出来過ぎて目が回りそうですね…w

あまりに高機能なのでここでは絞って3点だけお伝えしておきます。

カーブの形状

カーブの形状の操作もとても直感的です。

既に打たれているポイントはドラッグアンドドロップ移動が出来ます。

ポイントの無い場所でダブルクリックすると、ポイントを増やせます

逆にポイント上でダブルクリックすると消せます

また、頂点になっているポイント同士の真ん中にある、小さなポイントをドラッグすると、

滑らかなカーブに変えることができます。

滑らかにした小さなポイントをダブルクリックで、元の直線にできます。

更に、カーブの名前の左にあるマークをクリックする事で、

ポイントの始点終点ともに滑らかなカーブに出来ます。

MODE

ここではLFOの動き方の規則を変えられます。

  • Trigger:鍵盤の押し始めで、スライダーのある部分からLFOが動く
  • Sync:曲のテンポに同期して動く(スライダーでも開始位置をずらせる)
  • Envelope:押し始めでスライダーから始まり右端で止まる(ENVに近い動き)

まだありますが基本はこの辺りを把握していればまず困らないでしょう。

FREQUENCY

こちらは周波数、すなわちLFOの周期ですね。

LFOが左から右へ流れる時間、長さを決めます。一番分かりやすいです。

こちらも色んなパターンが用意されていますね。

  • Seconds:1000分の1秒単位で指定する
  • Tempo:単純音符(四分音符など付点の無い長さの音符)で指定する
  • Tempo Dotted:付点音符で指定する
  • Tempo Triplets:三連符で指定する
  • Keytrack:押した鍵盤のピッチで指定する

Keytrackだけはかなり独特で扱いが難しいですが、

どれも使い方次第でユニークな音を作れる可能性を秘めています。

モジュレーターその③:ランダム/RAND

さて、最後の項目ランダム(RAND)です。

とはいえこちらは勝手に不規則に動いてくれるモジュレーターなので、

あまり多く設定する項目がありません。

また特殊な機能でもあるので完全には搭載していないシンセも多い項目かと思います。

Vitalではここ!

こちらはフィルターにアサインしてみます。

このように、ランダムに対象パラメーターを動かします。

またこの動画では追加でモジュレーター全般において重要な機能も使っています。

それが”Bipolar””Unipolar”という概念です。

それぞれ以下のような動きをします。

  • Unipolar:初期値を基準に一方向にのみ動く
  • Bipolar:初期値を基準に両方向へ動く

例えば初期値まで確実に戻ってきてほしいならUnipolar、

両方向へ幅広く動かしたいならBipolarを使います。

右クリックして対象の項目を選択する事で切り替えられます。

これはENV・LFO・RANDすべてで使えるので活用してみてください。

また比較的重要だと思っている機能に、

Sample&HoldというMODEがあります。

試しにMODEを切り替えてみましょう。

最後の方の音は聞いたことがある人も居るんじゃないでしょうか。

このように、特定の値でキープし、パタパタと切り替えていくモードです。

個人的にRANDは、このMODEで使うかゆらゆらと動かしたい時に使うモジュレーターかなと思っています。

まとめ

ということで今回は以上となります!

お疲れ様でした!

モジュレーターは個人的にシンセの中で一番複雑になりがちな項目ではあると思います。

ADSRの動きアサインの仕方など、覚えることがたくさんですから…

ですが、ここがシンセの音作りで一番楽しくなってくるパートでもあります!

特にVitalドラッグアンドドロップで色んな所を動かせるので、無料シンセの中では特に取っつきやすいのではないでしょうか?

また世の中便利なもので、Vitalで様々な音を作る動画などがたくさん投稿されています。

そういったものの真似をしてみるのもきっと凄く勉強になると思います!

是非いっぱい弄って遊んでみてくださいね。

 

そして今回でシンセの基本構成に関する解説は完了です!

おめでとうございます!

これまでに解説した知識だけでも、かなりのパターンの音が作れるようになっているはずです。

といっても、まだまだ何をどうすればどんな音が出来るのか

想像も創造も難しいと思います。

なので次回からは、ここまででは解説出来なかった機能の紹介もしつつ、

既に紹介した機能で作れる色んな音の作り方を紹介していこうと思います!

お楽しみにっ!