初心セサイザー | Vitalで音作り編④ 無料ソフトシンセVitalで作る「シンセパッド」

皆さんごきげんよう。IWOLIです。

初心セサイザーシリーズの第4弾となります今回は、

シンセパッドSynth Pad)を作っていきます。

楽曲ではあまり目立たず聴き取りにくいパッドシンセですが、

これがあるかないかで曲全体の豪華さは歴然…!

更に主張が少ないため、意外と幅広いジャンルで応用が効く優等生でもあります。

ここで作り方を覚え、物足りない曲に彩りを加えていきましょう!

シンセパッドの基本

シンセパッドって何?

まずは基本的なパッドサウンドを作っていきますが、

その前に「パッドってなんぞいや?」ということも簡単に解説します。

英語で”Pad”とは「隙間を埋める詰め物」などを意味します。

そこから、音色における「パッド」とは、

「楽曲の隙間を埋める長く持続する音」を指す言葉となります。

リードメロディのように動いたり、ベースの様に刻んだり、

アルペジオやシーケンスのように小刻みに鳴るのではなく、

「ふわ~~」と主張は薄く常に鳴っている音が「パッド」です。

初心セサイザーシリーズ初回で作ったSuper Sawもパッドのように使用する事はできますが、

あちらほど主張せず、耳を澄ませて聴かないと分からないくらい目立たない、

それでも無いと寂しくなるような音です。

ストリングス(バイオリンとかヴィオラとか)などに近い音色もあれば、

キラキラしたテクスチャーが足されたシンセらしいパッドもありますが、

今回はシンプルな前者のようなパッドシンセを作っていきます!

基本のパッド音色を作る!

今回も例によってSaw波を使いますが、

シンセパッドはこれまでのリードやSuper Saw以上に自由度が高いため、

矩形波や、Vitalに備わっている様々な複雑な波形を使ってみるのも良いですよ!

ただし、Sin波などの倍音が少ない波形の場合、

このあとで行うFILTERを使った減算加工が機能しなくなるため、

似た方法が使いたい場合は倍音の多いものを選びましょう。

今回は前回のリード編と同じ”Classic Blend”を選びました。

わき道:ウェーブテーブルシンセの強み

前回はこの中のSaw波のみ使用しましたが、

実はこのウェーブテーブルは”Basic Shapes”よりも細かく波形が変化します。

鳴らしながら、波形の位置を変えてみると?

初期の三角波から矩形波まで、滑らかに変化しましたね!

Basic Shapesは基本波形がそれぞれブツ切りで並んでいたため、

それぞれの音一本で使うのに向いていますが、

少しずつ変えるような変化には向いていません。

一方Classic Blendなどのウェーブテーブルなら滑らかに変わるため、

少しずつ変えるような変化にも対応可能です!

また、「Saw波よりちょっと矩形波寄り」といった微妙な違いも出せるため、

シンセの音作りに鳴れた人ならとても個性が出しやすいんです!

リード・ベースでは芯が有る事が大切なので、こういった変化が余計になることも多いのですが、

パッドは長く伸ばすため、変化が少な過ぎても逆に退屈する恐れがあります。

そんな時にも、波形自体の変化で解決する事が出来る、

これもウェーブテーブルシンセの大きな強みと言えるでしょう!

これを利用した音作りも解説していきますが、パッドの基礎からは離れてしまうため、

一旦はSaw波だけを使ってシンセパッドの基礎を作っていきますね。

前回同様、右クリック→”Enter Value”から”100”と入力して、Saw波にしてください。

FILTER・デチューンで柔らかく

さて、お次ももはや恒例になりつつありますが、

FILTERなどを使ってつんざく感じを減らします。

まずはFILTERで倍音を削りましょう。

このまま続けても問題ないのですが、ちょっとプレーン過ぎてつまらない感じもあります。

パッドシンセには音の隙間・空間を埋めてほしいので、もっと広がりが欲しいですね。

ということでデチューンしちゃいましょう。

いい具合に広がりが出ましたね。

この動画のように、その幅を広げたり狭めても問題ないと思います。

これだけでも隙間を埋める役目は果たせますが、これじゃただのFILTERでカットしたSuper Sawです。

よりパッドらしく、「ふわ~~」と流れる感じを出してみましょう。

「ふわ~~」をもっと細かく言うと、「音の鳴り始め鳴り終わり穏やか」と言えます。

始めと終わりと言えば…?そう!ENVです!

パッドの基本はENV!

ということでENVを変えていきましょう!

まず、穏やかに鳴り始めるということはATTACKの時間が長いということ。

そして鳴り終わりも穏やかということは、音量がMAXになってから、

長めのDECAYやRELEASE時間をかけて小さくなるということです。

実際に変えてみましょう。

とても穏やかで心地よい音になりましたね!

これでシンセパッドの基本は完成です!コードで鳴らすととても気持ちいいですよ!

今回はATTACK、RELEASEの値をかなり適当に「変化が分かりやすいくらい」で決めていますが、

ここは曲の方向性や用途によってベストな長さが変わってきます。

  • テンポが遅い曲・伸びやかなブレイクパートで使う:長め
  • テンポが速い曲・リズムがはっきりしたパートで使う:短め

といった感じでしょうか。

特に後者のようなケースでアタック・リリースが長いと、

  • パッドの音量が上がりきる前に次のコードに移ってしまう
  • コードが変わっているのにリリースが鳴り終わらず、不協和音で混ざる

といったトラブルの原因になります。

発展:パッドらしい揺らぎを加える

さて、基本的なパッドサウンドが完成しましたが、

これだけだとSuper Sawから毛を抜いた程度であまり面白みがありません。

ここからは発展として、色んな個性を与えるためのアイデアをご紹介します。

まずは冒頭でも紹介した、「ウェーブテーブルシンセの得意技」を活かすパターン!

波形を変えて揺らす

早速波形を揺らしてみましょう!

ここは何を使っても良いとは思います。

「鳴らした時に一度だけ動かしたい!」→ENV

「ずっと動かしたい!」→LFO

といった感じで使い分けましょう。

LFOで波形を変える

今回はLFOで動かします。LFOの十字から、ウェーブテーブルのスライダーにアサインして…

このような感じで、初期値やアマウント量を変えることで

三角波、Saw波、矩形波をシームレスに変化させられます。

今回の”Classic Blend”などにありますが、

矩形波の幅(パルス幅)を変えられる際の注意点です。

矩形波の幅、「Pulse Width」(パルス ウィドゥス)を変更していくと、

このような状態から、

こんな状態になるところがあります。

しかし、この「波が全部下側に寄った状態」というのは、

全く音が鳴りません!

動画でも一瞬スライダーここに届いた瞬間、音が途切れているのが分かりますか?

こうなってしまうと不自然にブツ切りになってしまうので、

ここに至らないようにアマウント量を調整するか、

この状態がないウェーブテーブル(”Classic Fade”など)を選びましょう。

今回注意点多いな。

周期の基準を変える

さて、これで揺らぎは与えられましたが、周期が4分音符や1小節など、

キリが良過ぎて揺らいでいる感じがあまりありません

なので、ここはこの周期の基準から変えちゃいましょう。

このように、付点・三連符・時間指定などと変えることで、

ちょっとズレているからこその揺らぎを生めます。

LFOの動くMODEを変える

更に、今は”MODE”が”Trigger”となっています。

これは「音が鳴り始めたら、毎回スライダーのある場所からLFOを動かす」というモードです。

様々なモードがありますが、今回は”Sync”を試してみましょうか。

これにより「鳴り始めに関係なく、曲のテンポに同期する」状態になります。

周期を”TEMPO”、”2/1(2小節)”にした状態で比べてみましょう。

動画の丸印に注目!

次のコードに移った際に、TriggerモードではLFOが頭から始まっていましたが、

Syncにすると続きからになりましたね!

急激な変化を避け、続いたような感じにしたい場合、このSyncが有効です。

FILTERのCutoffを揺らす

更にFILTERを動かすことでも個性を加えられます。

これは過去にもSuper Sawやベースでやったことがありますね。

早速やっちゃいましょう!

今回はENVで動かしてみました。LFOで動かしても面白いと思いますよ!

このFILTERについても、あまり高い倍音が出たり、

いきなり強い音が出ると主張が強すぎてパッドっぽくない音になってしまいます。

ここはENV 1と同様にATTACKを遅らせたり、Cutoffを調整したりして、

丁度いいサウンドを探っていきましょう。

まとめ

まだまだ紹介しきれないテクニックはたくさんありますが、

余り詰め込み過ぎてもややこしいだけなので今回はここまで!

お疲れ様でした~!

目立つことの少ないシンセパッドですが、その主張の少なさから、

逆に自由度が高く色んなことを試して彩る事が出来るのもパッドの特徴です。

応用・中上級者向けテクニックとして、もっと複雑なことも試してみたいですね!

今後もシンセの音作りテクニックをご紹介していきますのでお楽しみに!

それでは、オヤカマッサン~

次は…アレかな~?