皆さんごきげんよう。IWOLIです。
ボカロ曲で学ぶ音楽理論シリーズ
今回は第二のマイナースケール、
第二回で少しお話しした、ナチュラルマイナー以外のマイナースケールのお話です。
参考楽曲はキャットラビングです。
少しややこしくなりますが、このテクニックによって新たな雰囲気をつくることができます!
それでは行きましょう!
Contents
キャットラビングのサビメロディ
では例によってメロディの確認から。
今回はサビ(0:26~)に絞ってお話しします。
また今回はマイナースケールの発展としてお話ししますので、
マイナースケールの基礎を理解していることが前提です。
もし、まだ理解していない方は以下の記事をご覧ください。
キャットラビングのスケール
さて早速、このキャットラビングのサビメロディを詳しく見ていきましょう。
メロディのみにするとこんな感じです。
そしてこの音程はこんな感じ。
また、こちらに使われている音を鍵盤で見てみましょう。すると…?
こんな感じになります。
このままでは分かりにくいので、1オクターブ内に収めてみます。
こちらを見て何か気づくことはありませんか?
まず一つ目、それは
妙に空いている区間がある事、だと思います。以下丸印
使う音に間が空くと言えば、ベノムの記事で話したペンタトニックスケールが近いと思うかもしれません。
Amペンタトニックスケール
ですが、ペンタトニックではあくまで鍵盤2つ分の空きでしたが、
今回は鍵盤3つ分と一つ多くなっています。
ペンタトニック
キャットラビングのメロディ
そしてもう一つ、
その空間が空いた分、その先のファからラまでの使用音が、かなり接近しています。
一連になっている、ファからド♯までを数えると、
短・長・短・長・長
となります。
これまでに話したメジャー・マイナースケールでは
長・長・短・長・長・長・短 メジャー
長・短・長・長・短・長・長 マイナー
であり、短と短の間は最低でも長が二つはありました。
しかし、キャットラビングの場合は、長が一つしかない場所がありますね。
このちょっと不思議なこのスケールこそが、今回のテーマでもある二つ目のマイナースケールです!
二つ目のマイナースケール、ハーモニックマイナー
この二つ目のマイナースケール、
名を「ハーモニックマイナースケール」と呼びます。
音の構成を長短で表すと
長・短・長・長・短・長+短・短
※正しい書き方ではない気もしますが、分かりやすくするためとしてご了承ください…
明らかに今までと違う部分がありますね?
そう、長+短です。
ナニコレ?って感じだと思います。
試しにファ♯から並べてみましょう。
キャットラビング
なんということでしょう
レ以外完全一致ではありませんか!
言い換えるとこの曲は、レを使わない、
F♯ハーモニックマイナー
だったということです!
ナチュラルマイナーとの違い
ナチュラルマイナーからの変化
キャットラビングがハーモニックマイナースケールで出来ている事は分かりましたが、
ナチュラルマイナーとの違い、もっと言うと
何故こんなスケールなのでしょうか。
試しにF♯ナチュラルマイナーと見比べてみましょう。
ナチュラルマイナー
ハーモニックマイナー
これらの違いは第七音、
ナチュラルではミだったものが、ハーモニックではファに半音上がっていますね!
これにより、最後の長・長という並びが伸び、
長・短・長・長・短・長・長
から
長・短・長・長・短・長+短・短
という不思議な並びになります。
何故こんなものが生まれたか。
それはナチュラルマイナーにあった一つの弱点を克服する為でした。
ナチュラルマイナーの弱点
ナチュラルマイナーの弱点とは
「曲の終止感を演出しにくい」ことです。
メジャーであれば、第七音から半音上がる事で主音へ帰ってくる為、
半音の不安定な雰囲気から帰ってきて落ち着くような、
ハッキリとした解決感、終止感を演出できます。
一方ナチュラルマイナーはメジャーと違い、
第七音から主音の距離が長(長2度)です。
このままだと、元の主音へ解決するための不安定さや緊張感が足りず、
ハッキリと「終わった!」と思わせにくい欠点があります。
マイナーの弱点を克服!
そこで登場したのがハーモニックマイナー!
第七音をシンプルに半音上げることで、主音との距離を半音に変えたことで、
第七音の緊張感、主音の終止感を強めたのです。
聴き比べてみよう
試しに、ナチュラルとハーモニックを聴き比べてみましょう。
※例によって変えられたものはかなり気色悪くなりますが…お許しをモイミさん…
まず、原曲の中でもハーモニックマイナー特有の第七音が使われている
終止感が顕著な個所をお聞きください。
「なくなる」の「なる」で半音下がって上がってという動きがあるため、
とても終止感があります。
一方、これをナチュラルマイナーにしてしまうと?
案の定というべきか、かなり違和感があります。
当然、原曲を聞き慣れているから、というのもあると思いますが、
例えこれで原曲を作られていても物足りなさはぬぐえなかったでしょう。
それくらい、ハーモニックマイナーの威力は絶大なのです!
ペンタトニックにおいて除かれる音の一つ、第六音(レ)を使っていないために、以下のような飛び方をした音使いになっていたようです。
第三のマイナーとは?
さて、以前の記事をご覧いただいた方は、
「じゃあ3つ目のマイナーは何?」と思われたかと思います。
先にいってしまうとこれは、
メロディックマイナー
と言います。
こちらはハーモニックマイナーの欠点である、
鍵盤二つ分離れた場所が、不自然で歌いにくさなどに繋がるという問題を、
第六音も半音上げることで解決したものです。
F♯メロディックマイナーの場合は以下のようになります。
並び方は
長・短・長・長・長・長・短
となります。
メジャースケールが
長・長・短・長・長・長・短
なのでなんと、メジャーと1か所が違うだけ!
その特性上、ナチュラルマイナー・ハーモニックマイナーに比べ明るく聴こえるスケールでもあります。
ただこちらについては著名なボカロ曲での使用例が現段階で見つかっていない為、
あくまでハーモニックマイナーの補足としての説明とさせていただきました。
まとめ
今回はマイナースケールの派生系として、
ハーモニックマイナー(とメロディックマイナーを少し)について解説しました。
その特徴は以下でした。
- ナチュラルマイナーの第七音を半音上げて作られたものがハーモニックマイナー
- ナチュラルマイナーの弱点である終止感を演出しやすい
- 第七音と第六音の距離を縮め、スムーズにしたものが、メロディックマイナー
マイナーの曲が多いボカロ曲の中には、もちろんナチュラルなものもありますが、
こういった派生系などでメロディに個性を出した曲も沢山あります。
是非、色々調べてみてください!きっと面白い発見がありますよ!
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