ボカロ曲で学ぶ音楽理論-キー・スケール編02:キー・メジャーとマイナーの話 ~”オーバーライド”の巻

皆さんごきげんよう。IWOLIです。

ボカロ曲で学ぶ音楽理論シリーズ

こちらはキー・スケール編の第二回目です。

今回は第一回を踏まえて更に踏み込んだ概念について解説します。

前回に引き続き、課題曲はオーバーライドです。

もし前回をまだ見ていない方はこちらから先にご覧ください。

ボカロ曲で学ぶ音楽理論01:スケールの話 ~”オーバーライド”の巻-キー・スケール編

それでは、行きますよ!

前回のおさらい

まずは前回のおさらいから。

第一回ではスケールというものの基礎についてお話ししました。

その特徴とは

  • 曲に使われる音はスケールに基づいて選ばれている
  • スケールが同じなら曲の雰囲気もほぼ同じ
  • 主音から長・長・半・長・長・長・半で並んだスケールをメジャースケールと呼ぶ

の3点を解説しましたね。

しかしこれはまだまだ説明不足です。

何せ、どうやって主音を判断しているのか、が分かりませんよね。

加えて、メジャー以外のスケールについても説明していませんでした。

今回はそこについて理解を深めるためにスケールの種類キーについてもお話ししようと思います。

スケールの種類

前回はメジャースケールのみを解説しましたが、

実はスケールというのは一つや二つではなく、

物凄い数の種類が存在します!

それぞれ使われる音の間隔も、1オクターブ内で使う音の数も異なったりするわけですが、

流石にそんなに詰め込まれても覚えきれないと思うので、

今回はメジャーに続いてとても頻繁に使われるものを紹介します。

それがマイナースケールです!

メジャーに対するマイナー、予定調和な感じがしますね。

ドを主音とした音の構成はこんな感じ。

前回のメジャースケールと見比べてみると?

ミ・ラ・シの三つが左隣にずれています。

つまり音の並びは、基準の音から

長・半・長・長・半・長・長

となります。

さて、ここで何か思い出しませんか?

三つが左隣にずれる…

そう!

あの気持ち悪くなったオーバーライド!

改造されて気持ち悪くなったオーバーライドの音たち

この音を、原曲と同じように並び替えてみてみましょう。

この通り!先ほどと同じく、

長・半・長・長・半・長・長

の並びになっていますね!

あの違和感は、もともとメジャースケールだったメロディを

マイナースケールの構成にずらしたことで生まれた物だったんです。

マイナースケールは一般的に、

メジャースケールより暗く、大人びた雰囲気がある、

なんて言われたりします。

元からマイナーで作られた曲は、アンニュイな雰囲気だったり、

ボカロ界でも人気な夜行性な雰囲気が出ています。

※不気味な感じになったのは元のメジャーな雰囲気からの差でしょうね。

補足:マイナースケールの種類

今回紹介したのは基本と言える

ナチュラルマイナースケール

というものです。

実際はマイナースケールには更にもう二つの形がありますが、

ややこしくなるので今回は割愛します。

楽曲の基準、キーの判別

さて、次はキーという概念についてです。

これは一言で言うとその曲の基準です。

遂に来ましたね!これで曲中の音の基準がわかります!

ですがその前に、音の呼び方についても説明しておきます。

これを見ている皆さんも、「ドレミファソラシ」くらいはご存じと思いますが、

キーについて話す場合は更に二つほど覚えていただく必要があります。

それが

「C・D・E・F・G・A・B」

「ハ・ニ・ホ・ヘ・ト・イ・ロ」

という呼び方です。

変な順番に思うと思われますが、これがそのまま

「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」

に対応します。

なぜこんなことまでお話ししたかというと、

音の基準、キーについて言及する場合、

その音の事は先ほどのアルファベットか日本語のイロハで呼称するためです。

逆に「ド・メジャー」とか「ラ・マイナー」と言ったりはしません。

これが何故なのかまでは僕も分かりません…。恐らくスケールを表す言語に合わせているのでしょうか…?

では実際に、先ほどの例でキーを見てみましょう。

まずこちらは、を主音としたメジャースケールでした。

ドはアルファベットでCです。

なのでこちらはCを主音としたメジャー、

つまりこの音階で作られた曲は、Cメジャーキーということです。

一方のこちらは、基準は同じドでもマイナースケールです。

つまりこの音階で作られた曲は、Cマイナーキーとなります。

補足:日本語での呼び方

ちなみに、先ほどの「イロハ」で呼称する場合、

メジャーは長調、マイナーは短調と呼びます。

なのでCメジャーは日本語でハ長調

Cマイナーはハ短調、となります。

キーの特定

特定方法その①

ではこれらの知識を踏まえて、そのキーの特定の話に移ります。

遂に前回からの「基準の音はどうしてわかるのか?」という疑問が解決します!

とはいえ、最も簡単な特定方法は非常にシンプルです。

それはメロディの最後の音です。

「それだけ?」と思うかもしれませんがこちらをお聞きください。

 

こちらの最後の音(歌詞で言う「オーバーライド」の「ド」)が

この曲のキー、”F♯”です。

そんなことの為に今まで説明してきたのかよ!?」と思うかもしれませんが、

それには理由があります。

残念ながらこの特定方法には大きな落とし穴があります。

例えばもし、この曲のメロディがこんな感じで終わっていたらどうでしょう?

実際の物の前半部分だけだった場合、

何かまだ続きそうな、少なくともこのままは終われなさそうな雰囲気がありますよね?

この部分のメロディはこんな感じです。

最後の音は「ラ♯」になっています。

キーの音で終わらなかった場合、

そのメロディはまだ終わっていないような中途半端な雰囲気になるという特徴があります。

こういったメロディの場合こそ、先ほどまでに説明してきたスケール・キーの知識が生きてきます!

補足:キーの音で終わらない曲

この中途半端な特徴から、これに当てはまる曲は多くありませんが、

逆にそれを狙って意図的に中途半端な終わり方を狙った曲も存在します。

例えばこちらのラストですね。

こちらの最後の盛り上がった部分で、敢えてキー以外の音で終わる事が、

この曲のテーマでもある「終わらない」というのを表しているように思えます。

特定方法その②

もしメロディのラストがキーの音ではないタイプだった場合、

キーの特定には、曲中で使用された音

メジャーまたはマイナースケールに当てはめて判別します。

※実際にはもっと沢山の種類があるのでそちらに当てはまるケースも極まれにありますが当然のごとく割愛します。

例えばオーバーライドは、最低音から最高音まで以下のような音が使われていました。

ですが、この並び方のままでは

長・長・長・半・長・長・半(「シ」スタート)

となってしまっており、メジャーにもマイナーにも当てはまりません。

ですが、ここでこの並びを数え始める場所を後ろへ変えてみましょう。

半・長・長・長・半・長・長(「ラ♯」スタート)

長・半・長・長・長・半・長(「ソ♯」スタート)

長・長・半・長・長・長・半(「ファ♯」スタート)

キタ!長長半長長長半キタ!これでかつる!

ということで、「ファ♯」を基準とするとメジャースケールに当てはまりました!

これでオーバーライドのキーは、ファ♯はF♯なので

F♯メジャーキー

である事がわかりました!

キーの特定はこの手順を踏むと、より確実に特定しやすいですよ!

メジャーとマイナーの不思議な関係

ところで、今の特定方法②で疑問に思った方もいるかもしれません。

「なんでそっち周りにしたの?」

その理由の一つは、説明する際に近かったからでもあるのですが、

もう一つがメジャーとマイナーの関係にあります。

一言で言うと、逆回りをした場合、先にマイナースケールにぶつかってしまいます

試してみましょう。

長・長・長・半・長・長・半(「シ」スタート)

長・長・半・長・長・半・長(「ド♯」スタート)

長・半・長・長・半・長・長(「レ♯」スタート)

( ゚д゚)ハッ!長半長長半長長…つまりマイナースケールだ!!

さあ大変だ。マイナーなのかメジャーなのかわからない

どういうことかといいますと、メジャースケールマイナースケール表裏一体なんです。

例えば、「ラ」から始まるマイナースケール、Aマイナースケール(=イ短調)を考えます。

ラから始めて、長半長長半長長なので使う音は…

なんということでしょう!

使う音はCメジャー全く同じ白鍵のみではありませんか!

これはつまり、使われた音の構成だけでは、

その曲がメジャーキーマイナーキーかは判別できないということです。

オーバーライドに置き換えると、メロディだけ見ればこの曲がD♯マイナーだとしてもおかしくはないということですね。

そんな時の判断材料の一つは先ほども登場したメロディの最後の音です。

ここでキーの音に収束し、終わり感が出ていれば、その音がキーと言えるでしょう。

もう一つはコード進行を元に判定するというのもあります。

詳しくは省きますが、オーバーライドではコードでもF♯が基準と判断できるため、

総合的に見てF♯メジャーキーの曲だと言えるでしょう。

補足:メジャーかマイナーか?

実際の所これはほとんど解釈に過ぎないところも強く、

メジャーかマイナーかを完全には断定できないケースも有り得ます。

メロディの終わりがキーの音でない(メジャーマイナーどちらでもない)かつ、

コード進行でも判定が困難な場合は特にどちらとも言い難いでしょう。

また同時に、例え同じメロディだとしても、

コード進行を変える事で強引に

メジャー ← → マイナー切り替えてしまう

なんてことも不可能ではなかったりします。

試しにやってみました。

あまり強くマイナー感が強調されたわけでもないですが、

原曲に比べてポップさが減りかなり暗めになった気がしませんか?

まとめ

今回はキーとスケールに関して前回より深くお話ししてきました。

まとめるとこんな感じです。

  • 基準から長・半・長・長・半・長・長で並んだスケールをマイナースケールという
  • 曲の基準をキーと呼び、Cメジャーキー、ハ長調などと呼ぶ
  • キーの特定はメロディの最後の音で判断すると楽
  • 使用される音の並びから当てはまるスケール・キーを判断するとより確実
  • 同じ音の組み合わせを使うスケールが、メジャー・マイナーにそれぞれ一つずつ存在する
  • 構成音が同じメジャー・マイナーキーのうち、どちらが正しいかはメロディやコードで概ね判断出来る

この辺りは基準考え方といった理解の難しい部分だと思います。

音楽理論を学ぼうとして挫折する一つの原因にもなり得るかもしれません。

なのであまり一気に理解する事にこだわらず、少しずつ理解を深めていくくらいでいいでしょう。

いきなり全部理解しなくても音楽を楽しむことは出来ます。

そうしてだんだんと分かる事が増えていくと、きっと更に音楽が楽しくなっていくと思います!

皆さんがそう感じていただけるような解説が出来る事を目指して、これからも更新していきますので、

参考にしていただければ嬉しいです。

それではまた次回の記事でお会いしましょう!

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