皆さんごきげんよう。IWOLIです。
ボカロ曲で学ぶ音楽理論シリーズ
今回はスケールの一つ、ペンタトニックスケールのお話です。
参考楽曲はかいりきベアさんの代表曲、ベノムを見ていきます。
メジャー・マイナーに比べると聞き慣れないかもしれませんが、
実はこれは非常に便利で、採用されることもとても多いスケールです。
今回はその特徴や、なぜ使いやすいのかなどを解説していきます。
Contents
ベノムのサビメロディ
ではまず原曲の紹介、確認から。
今回はこちらのサビ(1:00~)のみについてお話しします。
なお、今回はペンタトニックスケールの事を
メジャー・マイナースケールの基礎を知っている前提で説明します。
もし分からない方は以下をご覧ください!
ベノムのメロディとペンタトニックスケール
詳しくベノムのサビ部分のメロディを確認していきましょう。
こちらが耳コピしてみたデモです。こんな感じのメロディですね。
「そこで終わり?」と感じたと思いますがそれにはワケがあるんです。
詳しくは省きますが、ベノムのサビは後半にちょっとイレギュラーな音が含まれます。
そしてこちらがピアノロールに打ち込んだ楽譜データ(MIDI)です。
パッと見せられると、「こんな複雑なのを弾くのか…」とおじけづいてしまうかもしれません。
ですがここで試しに、使われている音を鍵盤上でまとめると…?
どうでしょう?意外とシンプルな感じがしませんか?
そう、たった6つの鍵盤しか使っていないんです!
さらに、一番左と一番右の鍵盤は同じ「ファ」の音になっています。
これもまとめてしまうとベノムのサビ前半で使われている音は
ファ・ラ♭・シ♭・ド・ミ♭
たったこの5つだけ!
なんだか意外な感じがしませんか?
凄く音も上下に飛ぶし、「ドレミファソラシ」と言うようにもうちょっとは使いそうな気がしませんか?
このたった5つの音の組み合わせを
ペンタトニックスケール
と言います。
これは、よく言及されるダイアトニックスケールから二つの音を除いたものです。
これによって残った音たちはとても安定したものになり、扱いやすいものになります。
何故使いやすいのか?
このペンタトニックスケール、とても使い勝手が良く
他の様々な有名曲でもよく使われます。
何故使いやすいとされるのでしょうか?
それは、スケール内に半音の関係にある音が存在しないからです。
ペンタトニックスケールの並び方
例えばこちらはCメジャースケールの構成音です。
メジャースケールの音の並びは
長・長・半・長・長・長・半
なので、この中には
ミとファ、 シとド
と2か所、半音の関係にある組み合わせがあります。
一方のペンタトニックスケールだと例えばこんな感じ。
おわかりでしょうか?
そうです、ファとシがありません!
つまり、Cメジャースケールのドから数えて4つ目と7つ目の音を
省いたスケールこそがペンタトニックスケールということです。
これによって、Cメジャースケールにはあった半音の関係が無くなります。
Cメジャーペンタトニックスケールと呼ばれます。
同じ構成音でもAマイナースケールを基準とした場合は
Aマイナーペンタトニックスケールということになりますね。
Aマイナーペンタトニックスケール
この辺りのメジャー・マイナーの話は以下の記事で解説しています。
半音が無いことの恩恵
この半音が無いというのが使いやすくなる理由です。
半音同士の音は同時に鳴ると不協和音になり、とても不快です。
例えばこんな感じ。お耳汚し失礼します。
これはメロディだけでなく、メロディとコードなど
全ての構成音同士で考える必要があります。
例えば、コードがCメジャーで鳴っている場合、
ド・ミ・ソ
の三つが鳴っている事になります。
その時にメロディが
ファまたはシ
を鳴らしてしまうと、コードの音と盛大に不協和音でぶつかってしまいます。
こうなると基本的に明確に不快になってしまうので避けましょうという事です。
ですがこれは、メジャー・マイナースケールのような
半音の関係が含まれるスケールを使用した場合の話です。
一方のペンタトニックスケールでは、これが省かれているため、
どんな音を使っても半音でぶつかることがなく
どの音も気軽に使えるんです!
何を使っても事故る事がない、
ある意味、無難な音たちのスケールとも言えますね。
無難さの弊害
しかし、ペンタトニックスケールには問題点と言える部分もあります。
それが無難過ぎてしまうことです。
ペンタトニックで省かれた二つの音たち、
こちらは半音でぶつかるリスクと引き換えに、
曲の盛り上げ、クライマックスへ向かう期待と緊張感を煽るといった
とても重要な役割を担っています。
そのため、これがないペンタトニックだと、
そういった高揚感などがあまりない、良くも悪くも普通なメロディになってしまいがちです。
またこれは大きな問題ではないですが、使う音の少なさから耳コピする側からするとキーの特定がしづらいという特徴もあります。
構成音が少ないため、その音が含まれるスケールの候補が絞り込みづらいのです。
またそれは言い換えると、メロディだけではキーを決定づける説得力が無いともいえるので、
どっちつかずなメロディ、ともいえるかもしれません。
そのためか、今回の参考楽曲ベノムではこんな工夫も…
ベノムサビのペンタトニックから外れた音
ここで…
お待たせしました、サビをフルで聴いてみましょう!※合いの手抜き
そしてこちらがそのメロディです。何が違うか分かりますか?
探すべきは、先ほどはなかった半音の関係にあたる音です。
ヒント①:この曲はFマイナーキーです!
つまりファの音から長・半・長・長・半・長・長だから…
ヒント②:ペンタトニックから外れているとは言いましたが、
メジャー・マイナーの基本に沿っているとは言っていない!
さてでは答えです!ペンタトニックから外れた音は…
この六つ!(二重になっててややこしいですが)
並べるとこうなります。
緑の音が先ほどと違う部分です。
はい、見事にFマイナーキーの基本の音
ファ・ソ・ラ♭・シ♭・ド・レ♭・ミ♭
からも外れたものがいます。
こうしてイレギュラーな音を要所要所に差し込むことによって
単調にならず、耳に残るキャッチーさや「もうすぐ終わるぞ!」という雰囲気を作っていたようです!
このように、キャッチーなメロディーには結構な確率で、
- 大部分を使いやすいペンタトニックで作り、
- ここぞ!という時にそこから外れた音を使う。
というテクニックによって作られる傾向があります!
まとめ
いかがだったでしょうか?
再生数8桁のかの有名な曲のサビが、大部分は5種類の音だけで出来ていたなんて意外じゃないですか?
おさらいするとペンタトニックスケールの特徴は
- メジャースケールを元に、第4音と第7音を除いたスケール
- 半音の関係にある音が無いため、安定していて使いやすい
- 無難過ぎて退屈になるリスクもある
という感じでした。
そして、そのペンタトニックの良さを生かしつつ耳を惹くために、
時としてペンタトニックにない音も使われていました。
この曲に限らず、かなり多くの曲が似た方法で、
- 大部分はペンタトニック
- 決め手に例外の音
というスタイルでメロディが作られています。
是非、色んな曲のメロディを調べてみてください。
きっと面白い発見がありますよ!
それではまた。
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