皆さんごきげんよう。IWOLIです。
今回はFutureBassと関連するジャンルについて、僕の持っている知識を共有していこうと思います。
ここ十数年で聴くようになった”FutureBass”というジャンル。
派生ジャンルを含め、耳にすることはあるけど、「結局何が特徴なのか?」と問われると、即答は難しいことも多いのではないでしょうか?
また、実際にFutureBass系の曲を作ったりRemixしようとして、「あれ、FutureBassってこんな感じだっけ?」となった事、ありませんか?(僕がそうでした)
「DubStepやTrapなどから派生したベースミュージックの一種」といった説明はありますが、例えば「じゃあMelodic Dubstepとの違いは?」と言われると困ってしまいます。
そこで今回は、僕が過去に聴いてきた例をもとに「”FutureBass”をFutureBassたらしめる何か」について知識を共有していこうと思います。
僕も勉強中の身ですし、ものによっては例外もあると思いますがご了承を…
それでは行きましょう!
Contents
FutureBassの例を聴いてみる
さて、まずは幾つかFutureBassとされる曲を聴いて共通点を探ってみましょう。
まずはやっぱりこちら!
やはりいいですね~!僕が初めて知ったFutureBassだったかな?世界的にも圧倒的な認知度なんじゃないかと思います。
2:03の驚き方が可愛い(*´ω`*)
続いてこちら
FlumeはFutureBassの先駆者とも言われる存在です。
先ほどのAloneに比べ音の密度は抑えめながらもリズムが力強く特徴的ですね。
更にはこちら
エモさ、落ち着き、リズム。まさに「これぞ!」って感じがします。
”Trap Nation”というチャンネルから投稿されていますがこれも一つのヒントだとおもいます。詳しくは後程。
FutureBassの共通点
では今あげた楽曲から共通点を探ってみたいと思います。
使われる音色
リズム系
まず音色についてですが、一つの特徴はリズム隊がTrapに近いことだと思います。
特にスネアが顕著でしょうか。
「スコッ」っというような、非常に短くタイトで、高めの音がFutureBassらしさを作る一因だと思います。
またスネアと同時にクラップなどの別のパーカッションを加えて個性的にするケースも多そうです。
Aloneがそうですね。(むしろこの曲の場合クラップだけ…?)
加えてハイハットも短い音を使い、16分や32分などかなり細かいリズムで鳴らす点もTrap譲りですね。
更にキックについても、低音が重視されながらも独特なニュアンスがありますね。
かなり説明しづらいのですが…
ドゥンっというキックの上で小さく「ギィン…」という金属的な飾りが添えられているように思えます。
音程楽器
続いて音程楽器、ベースやリードシンセ、コードシンセです。
まずベースに関してはかなりシンプルです。
こちらは多くのFutureBassにおいて、Trap譲りのシンプルなサブベースが使われているようです。
ドロップなどではずっと「ドゥウウウウン…」と轟くサウンドを奏でていますね。
さて一方のリード・コード(パッド)、こちらがやはりFutureBassでは特徴的ですね。
FutureBassにおけるリードは、アタックに若干癖のある音色が使われがちな気がします。
鳴る瞬間に「クュイン↑」としゃくるような感じでしょうか。
加えて、8分音符である程度動きがあるメロディラインの事も多いようです。
そしてコードやパッドシンセも特徴的ですね。
こちらはTrapと大きく違い、SuperSawなどとても広がりのある音色の使用率が高いです。
先ほどのLightのように「ヴワアアアアン」とド派手だったり、Never Be Like Youのように高域を抑えた綺麗目な音だったり(後者はストリングスかも?)
またAloneではSuperSaw系の音をリードとして使っているようですね。0:47あたりから徐々に目立ってきています。
もう一点の特徴として、そういった広がりのある音が「細かく刻まれる」というのもあるでしょう。
これはLightが顕著ですね。
0:51からのビルドアップで「ジャ ジャ ジャ ジャ」とゴージャスなシンセが細かく連打されています。
更にそういった音色で鳴らされるコードが、テンションノートを多く使っていることも特徴の一つでしょう。
例として7thや9thなどといった、元のトライアドに対し複雑な響きを足す音が加えられたコードが使われがちな傾向にあります。
もう一点、FutureBassを語る上で欠かせないのがヴォーカルチョップです。
それまで入っていたヴォーカルパートの一部を切り取り
「オゥ…」とか「エ~」といった部分だけでメロディを刻むようなパートです。
名前は知らずとも聞き覚えのある方は多いかもですね。
今回挙げた曲ですと、Aloneが分かりやすいでしょう。
ドロップの後半部分で「ドゥドゥドゥドゥ」みたいな声でメロディを刻んでいます
以上をまとめると、音色の特徴は以下の通りです。
- Trap由来のリズム隊(キック・スネア・ハイハット)
- しゃくるような癖のあるリード音
- 広がりのあるコード・パッドサウンド
- パッドサウンドを細かく刻む
- テンションノートを含むコード
- ヴォーカルチョップ
曲展開・リズム
続いて曲全体で見た構成・展開やリズムを見ていきましょう。
まず一番分かりやすいのはハーフテンポのリズムでしょう。
直前まで「タン・タン・タン・タン」というリズムで煽って来たのに対し、一番の見せ場たるドロップでは「ドゥン…タン…ドゥン…タン…」という感じのリズムになるのはFutureBassの定番です。
Never Be Like Youではあまり露骨には煽っていませんが。
とはいえただのハーフテンポではなく、FutureBassではそのリズムにも癖を付けることが多そうです。
例えば上記のAloneでもLightでも、ドロップ一発目のリズムはどちらかというと
「ドゥンドゥンタンドゥン/…ドゥンタン…」というリズムに近いです。
スネアのタイミングが遅めなのでハーフではあるけど、キックの数が少し多く個性的なのはFutureBassの特徴と言えそうです。
さて一方の曲展開ですが、こちらは割とEDMの定番と大差はないかな?という印象です。
多くの曲が
イントロ→ヴァース→ビルドアップ→ドロップ→ブレイク
を基本にしているようです。
或いは、Lightの場合はイントロとヴァースの間にドロップの短い版を、体験版のように配置しているパターンと言えるでしょうか?
あとは全体で見た特徴としてヴァースがかなりアンビエントな傾向があることでしょう。
アンビエント、すなわち空間や環境、雰囲気を重視した、リズム感などは逆に抑えた曲調ということですね。
リズム隊が落ち着き、数が少なくかつリバーブなどで空間の広がりを感じさせる音色のみで奏でられる印象があります。
他ジャンルとの違い
さて、ここからが本題に入ってきます!
今まではFutureBass単体の特徴でしたが、やはり気になる…!
じゃあ他とはどう違うの?
これについて考察していきます…!
Melodic Dubstepとの違い
まずはMelodic Dubstep。
これが一番混同しやすい気がします。
試しに例を聴いてみましょう。
これめっちゃすきなんです
さて、こちらの曲ですが、こういったジャンルをガッツリ調べた事が無い方は何が違うのか分からないかもしれません。僕が最近までそうでした。
ここで重要になってくるのが先ほど述べた「FutureBassはTrapやDubStepから派生した」という部分。
そう、DubStepの影響もありますが、Trapが存在します。
FutureBassではリズム隊がTrap寄りでしたが、Melodic Dubstepではリズム隊がDubStepらしくなっています。
一番分かりやすいのがスネアですね。
上記のAnywhereでもスネアの音が「スタン!」と突き抜けるようなパワフルな音が使われています。
またキックについても、若干の癖があったFutureBassと違い、純粋に低音を重視した音が使われているように思われます。
一方のリード・コードについても若干の差があると思います。
FutureBassではちょっと癖のあるリードが使われていましたが、Melodic Dubstepではポルタメントこそあれど明確な癖は付けられていない印象があります。
またコードやSuperSawについても、FutureBassでは細かい刻みがありましたが、Melodic Dubstepではバーーーッと鳴り続ける力強さがある印象です。
そして、FutureBassではドロップでヴォーカルチョップが使われがちなのに対して、Melodic Dubstepではそこまで多くないようです。むしろAnywhareではドロップでも歌ってますからね。
さて、もう一つ個人的に大きな違いだと思っているのがベースの使い方です。
サブベースこそ大きな違いはありませんがMelodic Dubstepではワブルベース・グロウルベースも良く使われています。
Anywhareでは3:31、最後の見せ場でキメてきます。
「デュオオオン…ギュゴゴゴゴ」なんてド派手に鼓膜を震わせてくれますね!
やはりDubStepもといBroStepの血統ということでしょうか。
逆にFutureBassではウワモノのリードなどを聴かせるためかあまり使われないのかな?と思います。
ADMとの違い
さて、次にADMを上げた物の、正直これとの差で迷う人が居るのかは微妙です。
そもそもADMとは「アコースティック・ダンス・ミュージック」の略。
つまり生楽器が多用されています。
「FutureBassはシンセだらけのEDMなんだから混同はされないんじゃ?」と思われると思いますが、意外と近いものとして認識されている気がしたので紹介します。
例えばこちら
ADMといえばThe Chainsmokersなイメージが勝手にあります。
さてこの曲、聴いて分かる通り、ピアノなどの生楽器こそあれど、ドラム隊がEDMのそれな上にハーフテンポで、おまけにシンセのコードまで入っており、かなりFutureBassの特徴と一致します。
曲によっては「ADMでもFutureBassでもある様な曲」も有り得るとは思いますが、Closerの場合、Trap要素が少ないことなどからFutureBassではなさそうです。
KawaiiFutureBassとの違い
続いてKawaiiFutureBassとの違い…
とは言っても、これは派生ジャンルなので違いというより「どこが変わった・追加されたか」について話します。
こちらも例のごとくまずは楽曲から
そりゃSnail’s Houseさん出すしかないっしょ…
だいぶベッタベタな参考例ですが特徴を見ていきましょう。
一言でいうと「Kawaii音を詰め込んで手数マシマシになっている」でしょうか(ざっくり過ぎる
例として、ドラム・リード・コードの音はそのままに
- 畳み掛ける細かいSEなどのサンプリング(ウォータードロップなど)
- チップチューン系の音
- ドロップのキメに使われる「段々と下がっていくコード進行」(1:59辺り)
- 細かいアルペジオ
などがあげられるでしょうか。
またこのTwinklestarにはありませんが、
- 可愛い声のサンプル
- ピチカート・グロッケンのような高く小っちゃなサウンド
などが入る事もありますね。
また音色面以外にリズムやテンポについても若干異なります。
一つはBPMが若干速いことも多い事があります。FutureBassではBPM140前後かと思われますが、KawaiiFutureBassでならBPM160を優に超えることもあります。
Twinklestarに至っては(多分)BPM176ですね。かなり高速です。
そのテンポに先ほどの音数の多さや、リズム面でのフックが増えていることも手伝って、KawaiiFutureBassは全体的にFutureBassよりも疾走感が増していることが多いようです。
日本人がウケるわけですね。
この辺りになってくると実は更に別の派生ジャンルに片足が掛かってきそうですが…そちらは次の章で!
また例外とも言えると思いますが、リズムが完全に4つ打ちになったパターンなんかもあります。どうみてもHouseです。本当に(ry
FutureCoreとの違い
またもや派生ジャンルとの比較です。
FutureCoreとはFutureBassにHardCore、特にUKHardCore系のアップテンポさやメロディックさを強調して組み合わせたジャンルです。
日本を中心に制作・開発され、日本人受けも良いのでJ-Coreの一種と言って差し支えないでしょう。
といってもこちらのジャンルは紹介するには中々に微妙です(汗
理由の一つに「ジャンルの狭さ」があると思います。
ジャンルが狭い、抽象的な言い方ですね()
これは「ジャンルが提唱されて歴が浅い」ことと「作り手の界隈に偏りがある」という考えからこう表現しました。
日本の同人EDM以外だとFutureBassなどほど広まっていない、というのが僕の認識です。
もう一点として「ジャンルのスタイルが自由過ぎる」ことです。
KawaiiFutureBassなら「可愛さ」というキーワードで繋がっていたものがFutureCoreはかなり解き放たれています。
そのため、FutureBassとの違いといっても最早「FutureBassの派生だと思い込んでいるHardCoreもといJ-Core」状態かもしれません。
なのでさらっとにはなりますが見ていきましょう。
やっぱこれでしょ
FutureCoreと言えば名が上がるPSYQUIさんですが、この方はかなり個性的です!
基本的にはFutureBassの要素も多く、エモいコードやサブベースなどはあります。
またキックの「ドン、ドン、ドンドッドッ」という付点八分音符を混ぜた連打もAloneのドロップ後半1:29辺りにあった通りFutureBass由来と言えます。
ですが、急停止するようなフィル、急にJuke / Footwork化したりDubCoreみたいになったりとかなりやりたい放題です。だがそれがホントに良い…
親戚ジャンルという事で比較はしましたが、むしろこれが同じ・似たジャンルと思われることはきっとないでしょう。
まとめ
さてFutureBassというジャンルについて、
「FutureBass自体の特徴」
「他ジャンルとの違い」
という2点から考察してきました。
まとめると
- Trapの要素を多く含んでいる
- 少し癖のあるリードシンセ
- キレよく刻まれたコードサウンド
という感じでしたね。
これをもとに、曲を聴いた時や作る時の「ジャンル感」のヒントにしていただけたら幸いです。
おまけ
実は、こんなことをしてきた動機は僕の中でも疑問があったためでもあります。
似た感じでジャンルについて調べたものの、
と思う事が意外とありました。ワブルベースに加えスネアのパワー感などからです。
逆も然り、ADMも然り。
ただこの辺りはFutureBassに限らぬ色んなジャンルを見てきた感じだと、かなり判断の難しい所なんだと思います。
そもそもジャンル名というのは区別というより「特徴の明記」のために名付けられるものだと僕は思っています。
そう考えると、ジャンル間で差を明確にしたり、「この曲は全くFutureBassではなくてADMだ!」なんて言うのが難しいことも説明しやすいでしょう。
また複数ジャンルの要素の掛け合わせは、何もFutureBassの生まれだけでなく非常にありふれたアプローチです。
そんなわけで、僕はFutureBassに限らずジャンルを判定する際は「このジャンルの要素・傾向が強い」という考え方をしています。
「この曲はコードシンセが刻まれているけどDubStepっぽいリズム隊だな」
「アコースティックな音も多いからADM要素もあるけど、Trapっぽさが強いしシンセも多いからFutureBass要素の方が多いかも?」
そんな見方をする方が、音楽を理解しやすいのかもしれない、と僕は思います。