自作曲解説シリーズ:「アナザーランド」で知る音ゲー曲、”HardRenaissance”の作り方 – 楽器構成

皆さんごきげんよう。IWOLIです。

先日、初のオリジナルボカロ曲となる

アナザーランド」を各種ストリーミングサイトで公開しました。

今回はこちらを題材として、

特に編曲に注目して解説を行っていきます。

不慣れな所もありますがお付き合いください!

アナザーランドの概要

まずはそもそもの概要について解説しておきます。

この曲はボーカル「初音ミク」のオリジナル曲ですが、

サムネや概要でお気づきの方もいらっしゃるでしょうか?

そう、この曲は2025/01/26付でホロライブを卒業(配信活動終了)した人気VTuber、(そして僕の最推しでもある)

沙花叉クロヱ」さんをテーマに、彼女に贈る歌として生み出したものです。

それ故に彼女に纏わる要素が幾つか散りばめられているのですが、

今回はあくまで編曲に絞って解説しますので割愛します。

さて、編曲面でこの曲の大きな特徴なのが、

記事のタイトルにもある”HardRenaissance”というジャンルを主体にしていることです。

これはHardcore Techno系ジャンルから派生して生まれたのですが、

高速で激しいリズムでありながら、

特に哀愁・エモさ・美しさといった印象が強調されています。

一方でこの曲は、ボカロ・J-POP・ネットサブカル同人音楽にありがちな傾向である、

パートごとの大胆な変化を持たせた、中々に目まぐるしい曲になっていると思います。

卒業する推しに贈る、言わば卒業ソングとしてはかなり異色な曲調ではありますが、

HardRenaissanceの綺麗目な雰囲気とテンポを軸に、

寂し気だけど、自ら選んだ門出を応援し、思い切って背中を押せるような曲」をイメージした結果、

このような方向性に定まりました。

僕が得意だからというのもある

ここからはこのHardRenaissanceハドルネと略します)らしいパートに絞り、

どのようにして「アナザーランド」がハドルネらしく作られたかについて解説していきます。

HardRenaissanceらしさとは何か?

次はそもそものハドルネらしさというのが何かについて確認しておきましょう。

簡単にハドルネの要素を列挙すると以下のようになります。

  • Hardcore由来の高速BPM四つ打ちリズム
  • 時折キックの連打キメが入る
  • ピアノ・ストリングスなどの生楽器で壮大な雰囲気がある
  • シンセリードの音程が上下へ派手に動き回る
  • リードメロディ付点八分のリズムがある事が多い

今回は編曲、特に楽器構成などに焦点を当て、

上記のうち上三つを中心とした、全体の音色決めについて「アナザーランド」をバラして解説します。

またこれら五つについて詳細は過去に以下の記事にて、

代表曲も踏まえて解説しているのでご確認ください!

音ゲー曲の代名詞!HardRenaissanceってどんなジャンル?”Evans”などの代表曲・おすすめ曲も紹介!

こちらで言及している通り、ほとんどのハドルネはインスト曲です。(ボーカルがない)

アナザーランドはその点、「ハドルネのボカロ」という時点でも割と個性的と言えるかもしれませんね。

(ボカロハドルネを僕は聴いたことがありません。あったら是非紹介してください)

問題として、上記のハドルネ要素を見ると「リードシンセメロ」に関するものは2つあります。

ですがボーカルが歌っているシンセが目立つとごちゃついてしまうため、リードシンセは休ませています。

即ち、歌っている間はハドルネっぽさが欠けるとも言えますね。

これらのことから、アナザーランドにおいて特にハドルネらしいパートは、

ボーカルが休んでいる、イントロ・間奏・アウトロ辺りになってきます。

この内イントロは6小節と少し異例な構成になっているため、

今回はしっかり8小節の長さを取っている間奏・アウトロに注目して解説していきます!

間奏・アウトロの試聴

ではその間奏とアウトロを聴いていただきましょう。

※諸事情によりボーカルパートはガイド用のリードシンセになってます。

間奏

アウトロ

どうでしょう、ちゃんとハドルネらしくなっているでしょうか?(疑心暗鬼)

ハドルネを色々聴いてきた方にとっては、アウトロの方がよりハドルネっぽいと感じられたかと思います。

その理由についても追々触れていきますが、今回は構成がシンプルな間奏をメインで解説していきます。

間奏のパート・楽器構成

ではいよいよ、楽器構成を見ていきましょう!

こちらが間奏部分をズームした編集画面です!

これより下には別の区間で使った楽器しかないため、

間奏で鳴っている音はこれで全てとなります。

楽器たちを数えると

  • リード系:3
  • コード・パッド系:6
  • ベース:2
  • ドラム:7
  • FX:3

となり、合計で21パートに分かれます。

派手な音の割に案外多くはないと思うのですが、どうでしょうか?(汗)

ロックバンドとかに比べれば明らかに多いですが、

壮大さ賑やかさが強調されたJ-POPなどに比べるとむしろ少ないのかな?というのが僕の印象です。

ですがこの構成は「こうでないといけない」と言ったものはほとんどなく

ここから一部を減らしたり足したりしても十分に成立します。

ただし、これらの楽器にはそれぞれ意味があり、

特に「ハドルネらしさに大きく寄与するパート」はほぼ必須になってきます。

ここからは、それぞれの楽器について深掘りし、

「なぜその音を入れたのか」を解説していきます。

リードパート

最初に解説するのはやはり一番目立つリードパートです。

この2、3トラックですね。

※打ち込み内容は全く同じです。

DAW上では2本だけに見えていますが、

シンセが”Vital”と”Avenger”になっている通り、

このシンセの内部で色々とレイヤーされています。

リードレイヤー①:Vital

まずはVitalのリードを見ていきます。ソロで鳴らしたのがこちら。

これ一つだと音色は意外と大人しいですね。

こちらはこんな感じのシンセパッチを使用しました!

※”Evans Lead”とか書いていますが結構弄ったので割と違う音になってます。

ご覧の通り、既にOSCを3つレイヤーしています。

それぞれ上から

  • になるSaw波
  • デチューンで広がりがありつつ、可愛げもある矩形波
  • 1オクターブ上煌びやかSuperSaw

となっています。

OSC 1もデチューンはしているのでSuperSawではあります。

ただVOICEやRANGEを狭めているので、あまりSuperSawっぽくはしていません。

音作りで特に意識したのは

  • 滑らかで優しめ
  • キンキンしない

という印象にする事でした。

そのためにOSC 2で矩形波を使う、

FILTERしっかりめに削る、といった加工をしました。

例えばこのFILTERをオフにすると、

こんな感じで高域が出る分、派手な音になります。

これでも問題はないのですが、目指した曲調テーマが、

  • 優しい
  • 儚げ
  • 別れ
  • 寂しい
  • 旅立ち

といったキーワードだったため、派手過ぎない方がいいだろうという結論に至りました。

リードレイヤー②:Avenger

お次は2本目のリード、Avengerです。

ソロで鳴らしたのがこちら。

打って変わってかなり派手ですね。

AvengerはOSCの数も波形の種類も多いためゴージャスな音が得意です。

使用したのはこちらのプリセットです。

LD Festival 2

購入時から使えるFactoryにあります。

「せっかく落ち着いた音作ったのに台無しじゃない?」という意見も現れそうですが、

この音は初めからあったわけではなく、

編曲を進める上でVitalだけではリードが奥に沈んだような

持ち上がってこない雰囲気を感じたために足した形です。

レイヤー①を加工するのではなく異なる特性を持った音重ねることで、

優しい芯のある音の周りを少し彩るような感じでしょうか。

レイヤー①を壊さないためにも、音量バランスはレイヤー②を小さめにしています。

重ねるとこんな感じになります。意外と雰囲気壊れてなくないですか?

ここでVital二つではなくAvengerを召喚したのは、

プリセットの優秀さもありますが、各シンセの得意な音色を考えてのことでもあります。

あくまで感覚ですが、Vital低中域の優しいリードグルグルギョワギョワしたベースを得意とし、

Avengerは高域まで倍音が張ったビリビリした目立つ音が得意な印象があります。

コード・パッド系パート

お次はパッド系、空間を埋めたりコードを鳴らすパートです。

聴き分けるのは難しい目立たないパートですが、

楽曲の空気感を決めますので「ハドルネらしさ」を出すためにも重要なパートとなっています!

4、6~10トラックが間奏を担当します。

コードシンセ:Vital

まずコードを一番しっかりと責任もって鳴らしてくれたのがVitalSuperSawです。

いい感じにゴージャスですね~それでいて優しい。

シンセパッチはこんな感じに設定しています。

はい、SuperSawと名付けていながら矩形波も鳴っています。

Saw波だけでも良かったのですが、

少し芯のある(=デチューンが狭い)音を矩形波という

倍音が若干少ない音で足すことで若干の個性を加えています。

あとはFILTERで高域を削り、悪目立ちしないようにしていますね。

ストリングス①:バイオリン

ここにきて遂に来た生楽器、バイオリンさんです。

2トラックに分かれては居るのですが敢えてまとめた音源がこちらです。

何故まとめたか、それは単純に、

2つ目のバイオリンは最後の「キン!」というスピッカートの為だけに用意したからです。

使用したのはこちら!

「バケモノ」と名高い音源、

無料で使えてしまうオーケストラ音源

BBC Symphony Orchestraのバイオリンです。

これ無料はマジで気が触れてる

バイオリンの音はやはりとても優等生的です。

壮大な雰囲気を出しつつも楽曲を邪魔しないため使いやすいですね。

安っぽい音源だと途端にチープになるリスクもありますが、

無料でありながらこの音源はそれを全く感じさせません。

細かいメロディでの使い方はまだ習得出来ていないのですが、

他の派手なシンセやドラムの中で、長く伸ばす弾き方をさせるのなら特に難しいこともなく使えるでしょう。

スピッカートなどの奏法の扱い

今回は間奏などのシンセリフの終わりに、キレのいいキメを付けていますが、

バイオリンたちにここすらそのままの奏法で弾かせてしまうと、

なんとも歯切れの悪い終わり方になってしまいます。

今回はそれを防ぐよう、スピッカートパートを用意しました。

(別トラックにしたのは、同じトラックで奏法を切り替える方法が分からなかったからです。)

バイオリンしかスピッカートがないのはめんどくさかったからです。

ストリングス②・③:ヴィオラ・チェロ

お次は同様なストリングスパート、ヴィオラとチェロです。

ヴィオラ

チェロ

チェロの音良いよな…←チェロすき

こちらの音源もバイオリンと同様、

ヴィオラ

チェロ

BBC Symphony Orchestraを使いました!

注意点は主に、

  • 各楽器が得意とする音域でハモる
  • 単音で使う
  • チェロなどの低い楽器はあまり動かさない

といった所でしょうか。オーケストラ詳しくないので自信はないですが

特に、こういった長く伸ばして演奏する楽器はついコードで打ち込みたくなる方もいると思いますが、

僕はバイオリン・ヴィオラ・チェロと楽器ごとに分けて

それぞれが単音を鳴らすことでコードが成立するように組み立てるようにしています。

最後の補足に、この曲の間奏でのストリングスパートでは忘れていて弄ってないのですが、

こういった生楽器はオートメーションベロシティ抑揚をつける方が望ましいです。

忘れてなかったイントロで比較

コントラバスは極低音過ぎて、シンセベースと駄々被りするので今回は省きました。(コントラ涙目)

とはいえGothic Hardcoreなどではベースにコントラバスをレイヤーするようなケースもあるようです。

バッキング:ピアノ

さてお待ちかね!ハドルネを最も強く特徴付けると言っても過言ではない、

ピアノパートです!

こちらは鍵盤楽器とあってかなり自由に打ち込み存分に自己表現できるパートとは思います。

今回はこんな感じにしています。

結構激し目コードを鳴らしたりアルペジオにしたりしています。

優しい曲にするんじゃなかったのか

使用音源について

今回のピアノ音源はこちら、

KontaktNoireを使用しました。

もちろんストリングス同様BBCを使っても良かったのですが、

あちらのピアノはもっと繊細で大人しくなっています。

今回は、あまりに大人しくし過ぎても変かな?という考えから、もう少し強めな音だったこちらを使用しました。

またピアノは打ち込みにも個性やテクニックが現れると思いますのでMIDIも確認してみましょう。

先ほど聴いた通り、音が上下に飛び回るようなバッキングになっています。

これは特にDJ YOSHITAKA氏のFLOWERを参考にしています。好きなので。再現出来ているかは別として

サビでも鳴っていますが、やはりその前のビルドアップが分かりやすいですね。

それTrancecoreじゃねーか!ってツッコミは無しでお願いします。

打ち込み方について

打ち込みにおいて一番意識したのは、

  • C3~C4までを左手
  • C4~C5までを右手

と想定する事で、両手でリズミカルに行ったり来たりしている雰囲気を主体としたことです。

FLOWERの影響の大部分はこれですね。

ですが一つの違いとして、低音で音が濁るのを避けたかったため、

使う音域がFLOWERより高くなっています。

また濁りを避けるために、それぞれの手がなるべく3つ以上同時に鳴らさないようにしています。

一方で、あくまでハドルネは打ち込み音楽なので、

実際の演奏を想定する必要はありません

特に白くハイライトされたこのノートに関しては

実際に弾かせる気など微塵もないことが伺えますね。

腕3本以上楽譜

ベロシティについて

ストリングスではオートメーションで強弱の抑揚を付けましたが、

ピアノは同時に複数の音を鳴らすことや、

鳴らすたびに強弱を変えるのが容易、むしろ基本なため、

オートメーションではなくノートごとのベロシティで抑揚をつけています。

と言っても一音一音変えるようなことはしておらず、

例えばこのように、低い方はベロシティを下げたり、

最後のピロピロパートを、じわじわ上がっていくようにするといった感じですね。

最後のジャジャン!寸前

最後の2連打「ジャジャン!」と鳴らす寸前に、

こんな感じでベロシティが極端に小さくなっています。

これは、そのまま高い音が鳴っているとメリハリに欠け

最後の「ジャジャン!」が際立たなかったためです。

音符を無くすというのも有効ですが、

一応鳴らしておきたかったためベロシティを下げることで対処しました。

リード・コード・パッド系まとめ

これで曲の雰囲気を決めるパッド系を全て解説しました。

同様に重要なリズム系がまだではありますが、ここまでだけでも結構ハドルネらしさを感じる事は出来ると思います!

どうでしょう?低音やリズム隊がない分スッカスカなはずなのに、ハドルネっぽい空気感はありませんか?

シンセベース

お次は低音担当、シンセベースたちです。

ここに関しては、曲のメインがボーカルなことや、

様々な変化がある曲な事もあってシンセリフで使うベースはあまり拘らず手抜き簡易的な構成です。

12、13トラックの2本のみですね。どちらもVitalで作りました。

シンセ内のレイヤーもさほど多くない…と思います。

サブベース

先にサブベースから解説します。

これは特に低い、200Hz辺りまでを担当する極低音パートです。

生楽器でいうコントラバスでしょうか。

低すぎて小さいスピーカーなどではほぼ聴こえないと思います。

スマホのスピーカーなどでは恩恵が薄いですが

クラブのサブウーファーなど低音がしっかりでる環境迫力を出すために入れるパートですね。

この音域も含んだ音を1本のベースで成立させる事は可能ではありますが、

音域を住み分け別々に制御する方がバランスが取りやすいため、先人に倣って僕もベースは2つ以上に分けています。

 

Vitalのパッチはこんな感じの設定です。

今回初登場のSin波ですね。

サブベースを分けて作る場合、音域で分ける事になるのですが、

例えば200Hzをサブベースの担当とした時、Saw波などを使っていると、

ド派手に響く倍音の制御が必要になってきます。

倍音を鳴らすのはもう一つのベースの役目なので、

サブベースはこういった倍音の無い音を使うか、

FILTERで中高域をガッツリ削ってやりましょう。

この曲でも、ディストーションなどで増えた倍音をEQで削っています。

といってもほとんど影響していませんでしたが…

別の曲ではもっと低い所で削る事も多いです。

あまり重要ではないかもしれませんが、

Sin波1本やディストーションを加えるだけだと少し物足りないことがあるので、

OSC 2で1オクターブ上のSin波を加えています。

メインベース

メインと言うべきかは分かりませんが、

サブベースが担当しない、150Hzや200Hz辺りより上を鳴らすパートです。

こちらはまだ聴こえやすいと思います。

倍音がしっかり出ているので「ンビーッ」とか「ンベーッ」って感じがしますね。

Vitalの設定はこんな感じです。

普通に結構レイヤーしてるわ…

それぞれ簡単に解説します。

OSC 1がメインとなるSaw波です。

芯になってもらうため、中低音に腰を据えてもらうよう、

FILTER 1で若干低めにしています。

OSC 2はもっと高音域でギンギンしてもらうため、

Pink Noiseというウェーブテーブルを使いました。

ノイズ系高周波な音が多く、こういう音を作るのに重宝します。

というかVitalには高周波重視の音が少な目…?

OSC 3は癖を付けたくて、

Acid Rock ft Maynixというウェーブテーブルを使い、

更に右のツマミで波形を弄っています。

ですがOSC 2が強すぎて正直存在感がありません()

それぞれを聴き比べてみましょう。

OSC 3マジで要らない子だったかもしれねぇ…

 

サブベースとの住み分けのため、低域は削るのをお忘れなく!

打ち込みの注意点

打ち込みなどの実用時の注意点としてはまず、

キックと被らない事が挙げられます。

同じ低音を担当する楽器になっているため、

なるべく同時に鳴らないように裏打ちにするか、

サイドチェインなどを使ったダッキングをお忘れなく!

(詳細は別記事で!)

一方で、ハドルネではほぼ必ず出てくるリズミカルなキメなど、

キック達のリズムが変わる部分でもベースが裏打ちのままだと締まらないキメになってしまいます。

そういう時は裏打ちをやめつつ、ダッキングなどで音が被らない様にしましょう。

ドラム

ドラム隊も重要な要素ですが、ここは音色よりも、

打ち込み方の方が重要になってくると思っています。

間奏では15~18、20~22トラックが鳴っています。

今回は楽器構成に注目しているため、あくまで音色に絞ってお話ししますね。

キック

多くのEDMがそうであるように、ハドルネにおいて最も重要なドラムキックと言って差し支えないでしょう。

キックだけだとこんな感じ。

最も重要なのは、BPMが速い上に連打する前提となるため、

とてもタイト短い音である必要があること。

一方で、元がHardcore Technoであることもあって、

低音域を中心強く目立つ音色であることも条件になります。

この条件を満たすキックはズバリ、TranceD’n’Bです。

Hardcoreじゃねーのか!」ってツッコミたくなりますが、

何故かggってみてもやたらとトランスやドラムンベースの方がヒットしやすいです。

さしずめ、Mainstream Hardcoreと呼ばれるジャンルは、

キックは自作するもの」でまかり通っていること、

更にそういった歪んだキックじゃないUKHardcore系は、

昔からTranceの音を使っていたため、

わざわざHardcore Techno用キックとしては出回っていないのかな?と思っています。

なのでハドルネを作る時は「Hardcore Kick」ではなく、

Trance Kick」とか「Drum’n’Bass Kick」で調べるのが良いでしょう。

今回の曲も、”AKAS DNB ESSENTIALS”という無料のD’n’B用サンプルパックから拝借し、

Studio Oneのサンプラー、”SampleOne”で使用しました。

 

もう一点、メインのキックが二つのトラックに分かれているのですが、

二つ目の方は”Kick Roll”という名の通り、連打しているロールのようなパートです。

この画像では分かりやすいよう赤くしました

これは、同じ音色でも連打する事によって低音を中心に膨れ上がり過ぎて、

音量バランスが崩れる事へ個別に対処するためです。

このような感じで連打の方は低域を若干削りました。

こんなんでいいのかは僕もわかりません。

リバースキック

ハドルネの中で最も重要なキック、

その中で最も必要不可欠な使用例がこれ、リバースキックだと思っています!!!

その名の通り、キックの音を逆再生し、

「ゥゥゥウウウワッ!」という吸い込まれるような音にしたものです。

こんな音です。

これを次のキックの寸前に配置する事でこうなります。

キックに吸い込まれるような、新たな没入感が生まれますね!

このテクニックが、ハドルネでは相当な頻度で使用されます。

実はこのリバースキック、ハドルネどころか音ゲーに限らず使われる事もあります。

例えば沙花叉クロヱさん繋がりでこちらの冒頭。

冒頭、「そこに跪け!」の寸前にリバースキックが「ウァワッ」と鳴っています。

更に(選曲の偏りが顕著ですが)この曲でも聴けます。

こちらも歌い出しの「叶わない」の「わ」を言う寸前に、聴こえましたか?

更にダメ押しでボカロ曲からこちら…

と思ったのですが、原曲ではなかなか聴き取れないのでこちらの解説動画をば。

リバースキックが沢山聴けて喜ばしい限りですね。

また、リバースキックを入れるときの地味なこだわりが、

余り高域の目立たない音を使う

ということです。

今回メインに使ったキックは高域にハリがあるのですが、

これをそのままリバースするとこうなります。

別に悪くはないのですが、リバースの高域が目立ちすぎて、

リバースキックのオイシイ所である「ゥゥワッ」感が弱まった感じがします。

これを避けるため僕は基本的に元々が、

低音の「ドゥウン」という部分が目立つ音を選んでいます。

音色はこれまた無料の”Revealed Producer Starter Pack Vol.4”のキックです。

ハイハット

ハイハットはシンプルにクローズオープン一つずつ使っています。

シンプルなので動画一本にまとめました。

(リズムが分かりやすいようキック付きです)

こちらはあまり注意点は多くないでしょうか。

  • Trance向きの高域重視なこと
  • タイト素早く鳴ること

辺りが条件になってくると思います。

今回はSampleOne Artistに付属していたサンプルを使いました。

打ち込みも、オープン裏打ち

クローズ16分で刻むのが疾走感が出るかな、ぐらいですね。

生ドラムならハイハットのパン(左右の位置)は揃えるのが前提になりますが、

ハドルネは打ち込みなので気にしなくて大丈夫です。

オートパンで左右に振るパートを追加しても良いくらいです。

生ドラムだったら有り得ないね

スネア・シンバル

スネアとクラッシュシンバルについてもあまり注意点は無いと思います。

ハイハット同様、タイト高域までハリのある音を選びましょう。

こちらもSampleOne Artistの付属音源です。

注意点は、最早打ち込み方の問題ですが、

クラッシュシンバルを連打するリズムのキメの部分では、

それまでのリズムがダラダラと残らないように、

スネアもハイハットも切っていることでしょうか。

たいして重要な事ではないですが、

今回のシンセリフでは真ん中で「スネアのピッチを若干上げる」テクを使っています。

「タンタ↑カ↑↑」と若干ピッチが上がっています。

別にやらなくても良いことですが、フィルのつもりだったんでしょうか(他人事)。

FX

さて、楽器構成解説も大詰め!FXです!

とはいえこちらもEDMの基本とあまり変わらないのでおまけのようなものですね。

注意点はドラム同様に高域までハリがあると、

沢山重ねてきたリードやパッドの煌びやかさに負けない音になると思います。

一方で低音重視な音を敢えて忍ばせるのも、時と場合によって有効です。

そもそも間奏では26、27、29の3トラックが1回ずつ音を発しているのみですが。

音はこんな感じです。

上二つの音はインパクトノイズフォールなどに分類される、

アタックがはっきりした音ですね。

今回はこれもまたスタワンArtistの付属音源ですね…なんだかんだ使いやすいです。

三つ目の音はその逆、少しずつ音が迫ってくるような、

ライザーなどと呼ばれる音です。

こちらはCymaticsのDubstep用無料サンプルから拝借しました。ここでは”White Noise Up”と名付けられていますね。

「こんなんでいいのか?」と思わないでもないですが、

そもそもハドルネが生楽器が結構重視されたジャンルでもあるため、

むしろKawaiiFutureBass系のようなサンプルをマシマシにしすぎる方がコテコテしてしまうかな?と思います。

なるべくFx以外で解決するのが近道というのが僕の考えです!

ベース・ドラム・FXまとめ

今度は土台であるベース~FXをまとめて聴いてみましょう。

今度は空気感を担う音色ほぼゼロですが、

これもまたリズムの複雑さや音色から、ハドルネっぽさの片鱗を感じ取れる気がします。

まとめ

こうしてできたのが、アナザーランドの間奏です!!

どうでしょうか?一部除きかなり無料音源DAWの付属音源で事足りていたり、

全体で音数も21個と、全体を聴いた印象の割には軽めな感じがしないでしょうか?

僕が麻痺してるだけかもしれない

少なくとも今まで見てきた色んな解説と比べるとマシかなと思っています。

結構色んな有料音源有料サンプルを使ったり、

50トラック以上を制御しているケースも見るので…

その点HardRenaissanceは、向いている音源の選定さえ上手く行けば、

第一印象の割には意外と作りやすいジャンルかな?と思います。

今回の記事であなたのHardRenaissance欲(?)に少しでも火を付けられたらうれしいです。

今後もHardRenaissanceの作り方や、ハドルネに限らず色んなジャンルの解説をしていこうと思っていますのでお楽しみに~

ハドルネは良いぞ!!!