ボカロ曲で学ぶ音楽理論-リズム編03:付点音符の話 ~”ベノムの巻

皆さんごきげんよう。IWOLIです。

ボカロ曲で学ぶ音楽理論シリーズ

今回は、リズム編の第3弾!

これまでは1小節を等分していった音符のみを解説していきましたが、

今回は等分「ではない」音符の一つ目、

付点音符について解説します!

こちらはとても簡単かつよく使われるものなのですが、

等分の4分・8分・16分では作れないリズムが生み出せます!

是非そのリズム感を習得してください!

参考曲はかいりきベアさんの超人気曲、「ベノム」です。

それではいきましょ~

ベノムのリズム

今回はいつものサビではなく、Aメロのリズムを確認していきます。

0:13辺りからAメロが始まります。

「足りないもの な~んだ?」という歌い出しですね。

この曲に限らずかいりきベアさんの楽曲は、BPM以上に疾走感があるものが多いですが、

その理由の一つはAメロ時点で既に始まっていると僕は思います!

その理由を紐解いていきますよ~!

なおこの曲は、前回の「魔法少女とチョコレゐト」に勝るとも劣らぬ歌詞の詰め込みがあります。

解説時のMIDIデータは実際の文字数を無視、または端折る可能性があることをご承知おきください。

ベノムをリズムだけで考える

ではさっそくこのメロディのリズムを調べていきましょう。

今回のテーマである付点は冒頭2小節、

「足りないもの な~んだ? 僕らの人生」

の間で既に使われていますので、ここに絞って考えます。

耳コピしたのがこちら。

以下がこの部分のMIDIデータです。

前回同様、この部分の音符の長さを測ってみます。

赤線が4分音符の長さ、リズムを表しているので…

おっとすみません、音程を一定にするのを忘れていました。

クラップを合わせた物

この長さを見ると4分音符は、

最後のここだけですね。

後ろの空白は休み、即ち「休符」となっているので、

2分音符まで伸ばさずに4分音符4分休符として解釈します。

楽譜では休符もマークがありますが、

MIDIでは「発音時間」のみを記述します。

そして8分音符は、

これらです。最も登場頻度が高いですね。

そして16分音符もあります。

この部分、「僕らの」の「ぼく」を16分二つで詰め込んでいます。

 

さて、ここまでが今までの解説で扱ってきた音符です。

でもベノムには、まだ上げていない音符がありますね?

コ イ ツ だ

これらが今回の主人公、付点8分音符です。

付点8分音符の長さを測る

試しに縦に別の音符を並べてみましょう。

8分音符を並べてみました。

現在の画面上の目盛りを見ると、

2目盛り分である8分音符よりも、1目盛り伸びていますね。

言い換えると、付点8分音符とは

8分音符1.5倍の長さの音符ということです。

ちなみにこの画面に入る縦線の目盛り幅は、

設定や現在のズーム度合いによって変わります。

実際にDAWで打ち込む場合は、1小節や1拍の長さがどれだけなのかちゃんと確認しましょう。

ミスると想定の倍速で進行する忙しな過ぎるメロディの出来上がりです。(n敗)

別の見方をすると、16分音符は8分音符の0.5倍の長さなので、

8分音符を16分音符1個分伸ばした、とも言えますね。

また、16分音符と比べると、

この通り、16分音符が1目盛りになるので(当たり前ですが)、

付点8分音符は16分音符3個分という言い方もできます。

ちなみに付点が付いてない音符の事は、

「単純音符」と言います。

8分音符や4分音符のことですね。

付点8分音符が持つ効果

付点8分音符はこの通り、8分音符から16分音符1個分ズレた長さを持つため、

発音時から16分音符1個分だけリズムがズレます

こちらを見ても、付点の後の音符(「な~んだ?」の「だ?」部分)が

4分音符刻みの赤線から16分音符1個分手前にずれているのが分かりますか?

これにより、単純音符では出来なかったグルーヴが生まれます。

魔法少女とチョコレゐトでのリズムとの違い

ここでちょっとおさらいです。

前回の魔法少女でも、16分音符の刻みがありました。

一つはサビ冒頭の「正直もうやめたい」という部分。

ここは音符を詰め込んだのみで、音の始まりは8分の時と大きく変わりません。

一方、二つ目の「らりぱっぱら…」の方は、

16分音符の裏拍になるのが特徴でした。

このリズムと、ベノムAメロの違いは、

16分で縮めるか、付点8分で伸ばすか、に尽きると言えます。

魔法少女は、細かく刻んだ上で表拍を省いたリズム、

ベノムは、16分音符1個分伸ばすことで、次の音符が16分の裏になったリズムです。

前者の場合はとても細かいため、「らりぱっぱら」のような意味のない歌詞ならリズミカルに聴こえて心地よいですが、

意味のある歌詞をこれで刻まれても、中々聴きとるのが難しくなるでしょう。

後者の場合は伸ばすため、「足りないもの な~んだ?」のような意味のある歌詞を綴りつつ、

16分の裏特有のリズム疾走感が強調できます。

かいりきベアさんはこのリズムがお好きなのか、特にAメロの掴みで頻発される印象がありますが、

かいりきベアさんに限らずこの「付点8分+付点8分+8分」によって生まれる、

ター ター タ」というリズムはとても汎用性が高いため、

疾走感リズムの捻りを出すために本当によく用いられます。

「付点8分+付点8分+8分」の一部に16分の刻みを加えるケースもありますね。

おまけ:付点はだいたいどんな音符でも付く

おまけとして、付点8分以外の付点も少し紹介します。

付点、即ち「長さ1.5倍」というのは基本的にどんな単純音符でも付きます。

長さ2拍分の「2分音符」なら「付点2分音符」になれば3拍分

長さ1拍分の「4分音符」なら「付点4分音符」は1拍と8分音符1個分、です。

1小節分の全音符だけは、付点が付くと1小節を超えてしまうため、

「付点全音符」というのは無いと思います。

実質その長さでも、「全音符+2分音符」という言い方がされるでしょう。

16分音符以上に短い音符にも付点は存在しえますが、

ここまで来ると細かすぎてほとんど意味をなさないからか、滅多に見る事は無いと思います。あったら教えてください。

ボカロ曲は歌詞の詰め込み傾向が顕著で、付点4分以上の長さを見る機会は多くないと思われます。

ベノムも(無理に解釈すれば有るとも言えますが)ほとんど4分音符以下の長さです。

「吐き出せないの」の「な~~~~い」が異例の長さですが、

残念ながら完全な付点ではなく「2分音符+4分音符+8分音符」の長さです。

「付点2分音符+8分音符」とも解釈可能ではありますが。

ボカロで4分以上の純粋な付点が使われているのは、

アスノヨゾラ哨戒班でしょうか。

0:34からのサビの、「世界の彼方」の「世」に注目!

「世界」の「世」から「界」までの長さが、

4分音符+8分音符になっているのがわかりますか?

また付点2分音符もありますね。

0:21からの1番Bメロ冒頭、「そんな」の「な」の伸ばす時間に注目!

次の「僕」が来るまでに、丁度3拍数えられますね。

サビの「空へ舞う」の「舞~」は残念ながら、

「2分音符+8分音符」なので付点ではありません。

ボカロ界の有名曲は長い音符が少ないように思いますが、

アスノヨゾラではこの音符の長さ(音価と言います)が長めの音符を使う事で、大空の突き抜ける壮大さを感じられますね!

まとめ

以上、今回はベノムのAメロから

付点音符について解説しました。

単純音符とはまた違ったリズムを生み出せるこちら、

付点音符だからこそ出せるグルーヴ、変化を感じ、

是非作曲などに活かしてくださいね!

それでは、オヤカマッサン~

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