皆さんごきげんよう。IWOLIです。
今回は音楽ジャンル、KawaiiFutureBassについて詳しく解説していこうと思います。
日本におけるKawaiiFutureBass人気ってすごい。
日本人クリエイターの作品やYoutube、ブログの解説を見ても、なんかやたらと
「FutureBassの話をしたらKawaiiFutureBassも言わざるを得ないっ!」
「っていうかFutureBassって言ったらKawaiiFutureBassじゃない?」
という雰囲気すら感じてしまいます。
やはりストイックな傾向にあるFutureBassに比べ、
可愛くてギミックの多い曲調が馴染むのでしょうか。
このサイトでは以前、FutureBass全体に関する解説は行いましたが、
その際はKawaiiFutureBassについては「近いジャンルとの比較」として、
あくまで基本をさらう感じにとどめていました。
今回はそこをさらに深掘り!
様々な代表曲を上げて、更にKawaiiFutureBassの理解を深めていこうと思います!
また、先ほどお話しした通り、派生元であるFutureBassについての解説もありますので、
気になるという方はこちらもぜひご確認ください。
Contents
KawaiiFutureBassのはじまり
まずはFutureBassから派生し、KawaiiFutureBassが生まれた、
その起源を見ていきましょう。
KawaiiFutureBassの代表曲
KawaiiFutureBassは日本のトラックメイカー、
”Ujico*/Snail’s House”さんが提唱したサブジャンルです。
日本人からEDMジャンルが始まった、結構珍しいケースですね。
代表曲はやはりこちらでしょう!
Pixel GalaxyはKawaiiFutureBass界の伝説ッ!!!
最早説明不要な「これぞKawaiiFutureBass」って感じです。
FutureBassの代表曲
では一方で、派生元であるFutureBassとはどんな曲でしょうか?
例えばこの曲なんかが典型的かと思います。
聴いてみてどうでしょうか?
「似てる」と思われる方も、「全然違う」と思われる方もいらっしゃると思います。
何故似てると感じるのか、何故全然違うように思えるのかは、
後の章で解説しますね。
幾つかFutureBassを聴いているとこちらの曲の方が
「多くの人が作っている・認識している典型的なFutureBass」
に近いと思ったためSan Holo氏のLightを例に出しました。
Marshmello氏は比較的Trap要素が強めな気がします。
KawaiiFutureBass誕生までの過渡期
さてここでKawaiiFutureBassの特徴を洗い出しても良いのですが、
このFutureBassからKawaiiFutureBassが派生するまでの
丁度、間に当たるような楽曲があります。それがこちら
先ほど紹介したUjicoさんのチャンネルで現在試聴できる最初の動画です。
見られる側からすると卒アル出される気分で穏やかじゃないのかもしれませんが…
概要欄を翻訳すると、日本人の17歳の作曲家であることや、
これからKawaii音楽を世に送り出す試みを始める旨がつづられています。
17歳でこれ…天孫降臨かな?
またその次、2015年6月に投稿された楽曲はこちらです。
こちらはLivetune feat.初音ミクの名曲、Tell Your WorldのRemixではありますが、
個人的に、ジャンル感や編曲というものを知る上ではむしろリミックス楽曲の方が参考になると思います。
こちらを見るといくつかKawaiiFutureBassが生まれる前の姿というのが見えてくるかもしれません。
更に色んな有名曲を聴き比べつつ詳しく見ていきましょう!
KawaiiFutureBassの特徴を洗い出そう
さていよいよです!
KawaiiFutureBassの特徴、FutureBassとの違いを詳しく見てみましょう。
まずは代表曲、Pixel Galaxyの特徴を見てみましょうか。
チップチューン
真っ先に耳に飛び込んでくるのは、やはりチップチューンサウンド、
所謂ピコピコ音でしょうか。
何ならこの曲では開幕0:01から既になっています。これはゲームボーイの音でしょうか?
その後のスーファミっぽいコントローラーや、0:04から0:17辺りまではほとんどチップチューンの音しか鳴っていない事、
時折登場するカービィに加え、3:27からのフレーズではなんと
星のカービィの名曲グリーングリーンズがそのままサンプリングされています。
カービィお好きなんでしょうかぼくもすき
リード音以外にも細かく小さい音でフィルのようにチップチューン、8bitサウンドが散りばめられています。1:05からのドロップに顕著ですね。
まさにPixel Galaxy。
一方、1:05からのドロップの始まりに鳴っているような
「ブワアアアアン」というド派手なコード音。
おそらくSuper Sawが使われているのだと思いますが、この点に関してはFutureBassにも使われていますね。
[button]San Holo – Light (1:17)[/button]と言ってもこちらではあくまで後ろから湧き上がる様に使われていますし、
KawaiiFutureBassのようにド派手に、かつピッチの動きで「ビュウウウン↓」と上下する事もFutureBassではあまりない印象です。
音色の変化・音数の多さ
また薄々勘づいているかもですが、
音色の変化、もとい「物凄く多岐にわたる音色が畳み掛ける」というのも特徴的です。
San HoloのLightの場合、リードに鳴っている音は一つであり、
そこを追っていればメインの音が追えますが、
Pixel Galaxyの場合、リードを聴いていたら不意に全然違うコード音が目立ってきたり、
リードの音色が別物に変わったりという変化が非常に多いです。
ユニークかつ可愛い音色のサンプリング
また可愛い効果音、サンプリング素材を散りばめるケースも多く見られます。
Pixel Galaxyに関しては大部分がチップチューンで可愛さを表現されていますが、
1:12辺りで一瞬「ぽちゃん」という水の落ちる音が鳴っています。
正式にはウォータードロップと言います。
「キコキコ」と言った音も使われることがありますね。
Bed Squeakと言うらしいです。(訳すとベッドが軋む音、アカンやろ)
こう言った音はFutureBassとは別のジャンル、
Jersey Clubから引っ張ってきたようです。
この辺りは後程、別の曲も聴きつつ詳しく解説します。
お洒落なコードの下降
特徴的なコード進行も欠かせませんね。
それは、コードの構成音を、同じ間隔のまま半音ずつ下げる進行です。
Pixel Galaxyでは1:16辺りの一瞬で使われています。
「ダァーン、ダァーン↓、ダァーン↓↓」と、なんかメランコリーでおしゃれな感じがしませんか?
この進行がKawaiiFutureBassでは非常に多いです。
KawaiiFutureBassを聴けばこの進行がどこかにあると言っても良いんじゃないかというくらい。もはや信仰である。
厳密にはクリシェとは「コードのうち一つの音を半音ずつ動かすテクニック」を指します。
KawaiiFutureBassで使われるのはコードの一部ではなく「コード全体を下げる」技なので、
厳密なクリシェではありません。
と言ってもその辺もだんだんと曖昧になって、クリシェで通じてしまいがちではありますが…
別のKawaiiFutureBassも聴いてKawaii部分を探そう
今度はPixel Galaxy以外の楽曲や、Ujicoさん以外の方の作品も聴いて、
広く「KawaiiFutureBassといえばこれ」と認識されているものを探ってみます。
ここでオリジナルではなくRemixを見てみましょう。
原曲ではロック調だったものが完全にKawaiiFutureBass化されています。
リズムがFutureBass由来の2ステップに変えられている点や、Trapの要素、ヴォーカルチョップの他
Pixel Galaxyにも見られたチップチューンが顕在ですね。
また一方で、重ねたり畳み掛ける音数の量はPixel Galaxyより控えめなため、より分かりやすい所があると思います。
更にもう一曲!
ここにきてまさかのフリーBGM。
こちらは聴いたことがある方も多いのではないでしょうか?
フリーなだけあり人気もあいまって様々なシーンで聴く曲ですね。
こちらは作者がHPで「FutureBass系」とおっしゃっていますが、
僕はかなりKawaiiFutureBassに寄っていると解釈しています。
その理由も含めてみていきましょう。
甲高いKawaiiサウンド
まずヴァンパイアRemixではチップチューンやSuper Sawのコードに合わせ、
とても甲高くかわいらしさを感じる音が使われていることにお気づきでしょうか?
ボーカルが消える間奏の0:13辺りが比較的分かりやすいでしょうか。
リードの隙間から「キンキン♪」「キラキラ♪」といったとても高い音が奏でられています。
FutureBassではシンセのリードかプラック止まりだったものが、
KawaiiFutureBassではそれらに加え、
- シロフォン・グロッケン
- シンセベル
- バイオリンのピチカート
- ピアノ・エレピ
などなど、高く弾けるような音が頻繁に使われます。
スタットする・刻む・ピッチベンドしたコードシンセ
この特徴はPixel Galaxyにもありましたが、
SUMMER TRIANGLEやヴァンパイアのRemixでとても分かりやすいかな?と思う要素でもあります。
まずスタットという言葉ですが、和訳すると吃音です。
即ち音を「タタタタッ」と細かく刻むことですね。
スタットが分かりやすいのはSUMMER TRIANGLEでしょうか。
0:45辺りで後ろのコードシンセが「パパパパッ」と小刻みに震えるような演出がされています。
またスタットまではいかないけど、コードシンセを細かく連打したり、
一瞬差し込むように鳴らすことも多いようです。
これはヴァンパイアRemixでも見て取れます。
0:47からのBメロ(「いいもん」の直後)で、
「ヴァーン、ヴァーン、ヴァーーーン」と3連打をかましています。
これらスタットや刻みはFutureBassでも一部見られるケースはありますが、
あくまでヴァースやドロップ全体で連続する「メインのモチーフ」として用いられる傾向があります。
一方のKawaiiFutureBassでは更に分かりやすく、フィルとしてかなり目立つように配置されている印象です。
更にヴァンパイアRemixのBメロのように、
「鳴らしたらすぐ止めて沈黙を作る」というのもKawaiiFutureBass特有でしょうか。
なんだかんだ鳴り続ける事が多いFutureBassに対して、
KawaiiFutureBassはストップアンドゴーの傾向やカットアップ的な雰囲気が強いです。
更にKawaiiFutureBassで顕著なのがコードシンセのピッチベンドです。
鳴り始めや終わりにピッチを動かし「ブ↓ワ↑アアアアン」「デュウウウウン↓」と動かすテクニックですね。
例えばSUMMER TRIANGLEの、0:34から始まるドロップ冒頭。
いきなり「ブ↓ワ↑アアアアン」と、シンセがせり上がってくるように鳴っているのが分かりますか?
更にヴァンパイアでは0:24からのAメロで冒頭に鳴っているコードが
「最低」の終わり辺りで「デュウウウウン↓」と下がっています。
こうした手数で耳を惹く雰囲気を作るのもKawaiiFutureBassの特徴と言えるでしょう。
今回はピッチベンドで紹介しましたが、
特に音程が下がる際に似た雰囲気を演出できるテクニックとして、
テープストップがあります。正にテープを止めた時のようなエフェクトです。
こちらも頻繁に使われますし、
ピッチベンドと紹介したシーンも実際はテープストップな可能性は高いです。
BPM
ここまでPixel Galaxy・ヴァンパイアRemix・SUMMER TRIANGLEと聴いてきて、
それぞれにほぼ共通する、とっても重要な基礎情報の共通点がBPMです。
まずは以前の記事で挙げたFutureBassのBPMを確認してみましょう。
一方で先ほど挙げたKawaiiFutureBassたちのBPMを確認してみると?
- Pixel Galaxy:150
- ヴァンパイアRemix:166
- SUMMER TRIANGLE:175
なんか速くな~い?
見ての通り、KawaiiFutureBassに属する曲は共通して、
FutureBassとされている曲よりも一回り以上BPMが速いです。
また、この中では最も遅いKawaiiFutureBassを作ったUjicoさんもこのような曲を作られています。
こちらに関してはSUMMER TRIANGLE同様BPM175です。
聴いてみても明らかにかなり高速ですよね。
一般的にFutureBassはBPM120~150くらいとされていますが、
KawaiiFutureBassはBPM150~180と、
何気にFutureBassより速いケースが非常に多いです。
先ほどまでの音数・手数に加えこの速さが、耳を惹く秘訣と言えるでしょう。
これまでのスタイルを覆すKawaiiFutureBass
さてここまででKawaiiFutureBassらしさを深掘りしてきましたが、
このジャンル名が日本中で話題となるうちに、
様々な方法で「Kawaii×ダンスミュージック」が錬成されていきました。
その結果、このような曲も生み出されました。
FutureBassなの?Houseなの?
「え?FutureBass?」と思われた方が居たら鋭い!
逆に「まあ、電子音楽でかつ可愛いよね」という印象から、
これでKawaiiFutureBassと呼ばれても違和感を覚えない方も多いと思います。
ここでFutureBassの定義をもう一度見直しましょう。
- Trap由来の2ステップリズム
- 派手なシンセが…
- アンビエントな…
いや一発目から違っとるやん!??!?!
お気づきでしょうか?
このAIAIAIという曲では、全体がずっと4つ打ちで展開しています。
- 2ステップ:「ドン…パン…ドン…パン…」
- 4つ打ち:「ドン、ドン、ドン、ドン、」
更にこの曲のBPMは128。KawaiiFutureBassに比べるとかなり低速です。
BPM128の4つ打ち…これってむしろ…
Houseなのでは?
BPM128前後、4拍子の一定のリズムでキックが鳴る、
典型的な4つ打ちダンスミュージックの基本と呼べるジャンル。
単純にEDMと呼んでもこのジャンルが当てはまるケースはかなり多い。
例えばこちら
聞き覚えのある方も多いのでは?はい、アレです。
特にこちらはElectro Houseと呼ばれるものですね(トランペットは異例ですが)
このAIAIAI、
「これはもうFutureBassではないやろ」と言いたくなるようなリズムでも、
実際に多くの人がKawaiiFutureBassとして認識されています。
とてもノリやすいのは事実ですが…
特にジャンル区別を考えず開発、認知が広まったのか、
KawaiiFutureBassという単語が独り歩きした結果、
別にFutureBassとして作っていなくてもそう認識されたのか。
この流れに違和感を覚えてか、可愛いEDMだけど4つ打ちの場合を
”KawaiiFutureHouse”と呼称するケースが散見されますが、
あまり浸透しておらず、ほとんどがKawaiiFutureBassと呼ばれているようです。
こういうのは多数派には逆らえないので…
BPMが「外れるケースもある」と言ったその最大の理由がこれです。
流石に速過ぎるんじゃない?
一方で逆パターンも存在します。一例がこちら
速っ!
図ってみればBPMは180、遂に170台ですら収まらなくなりました。
加えてSUMMER TRIANGLEなどでは例えBPMが速くとも、
キック同士の距離を空けて2ステップらしいリズムを強調するシーンがありました。
SUMMER TRIANGLEの0:34のドロップ冒頭が分かりやすいですね。
「ドン!……パン!」という待ちがしっかり担保されています。
一方のFuture Cαndyではどうでしょうか?
0:20からのドロップを聴いてみると…
「Future Cαndy!」という声の後、一発目こそキックが抜けていますが、
「ドンドッドッドッ、ドンドンドッドッドッ…」と、
間髪入れずに相当な速度でキックが連打されています。
このリズムは序盤でも話したJersey clubの流れではあるのですが、
ドロップ開幕からこのリズムなので2ステップ、ハーフテンポ感があまりありません。
ハーフテンポらしくなるのは0:34のドロップ後半からとなっています。
そしてそれも、キックは変わらないままスネアが入ることでハーフテンポ感を出しているため、スピード感が余り落ちていません。
曲全体を通してかなりアップテンポさが強調されたこのスタイルは、
速い4つ打ちジャンルの総称、Hardcoreから名前を拝借し、
FutureCoreと呼ばれています。
FutureCoreであると同時にKawaiiFutureBassの一種でもあると解釈できると思います。
例えば同じアルバムに収録されているFuture Cαkeは、
BPM160に収まっており、キックは細かくとも十分KawaiiFutureBassと呼べるでしょう。(曲展開は攻めている印象ですが)
FutureCoreに関しては、日本特有のHardcoreの総称、
J-Coreについて解説した記事でも触れていますので是非!
まとめ
以上、KawaiiFutureBassとは何か?について解説しました。
FutureBassに比べるとこちらはかなり自由度が高いジャンルなので、
一定の共通点を見出すのは難しいのですが、
全体においてとにかく「カワイイを詰め込んだEDM!」という雰囲気は感じていただけたでしょうか?
また具体的な特徴をまとめると以下のようになります。
- 速めのBPM(150~175)
- 音数・手数が多い
- チップチューン
- コードシンセのスタット・刻み・ピッチベンド
- コードの半音ずつ下降
- 甲高い可愛いサウンド
- 可愛い音のサンプリング
- リズムがHouseなもの、かなり高速なものもある
という感じでした。
もちろん今回の例にはなかったKawaiiFutureBassらしい要素を取り入れた曲もあります。
是非いろいろと調べてみてくださいね!
それでは、オヤカマッサン~
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