自作曲解説シリーズ:「アナザーランド」で知る”HardRenaissance”の作り方 – メロディ・打ち込み方

皆さんごきげんよう。IWOLIです。

自作曲解説シリーズ、「アナザーランド」の続編となります今回は、

前回では解説しきれなかった細かい部分、

特にHardRenaissanceらしいシンセリフのメロディ作りについてお話しします!

メロディは多くのクリエイターさんが、ハドルネに限らず苦戦されているのではないでしょうか?

少なくとも僕は屈指の苦手項目だったりします…。

今回はそんな僕が、クオリティはさておきハドルネっぽいメロディを完成させられた、

その理由たる、「HardRenaissanceらしいメロディの作り方」について共有していきます。

まだ前回を見てないよ!という方はこちらから先にご覧ください!

自作曲解説シリーズ:「アナザーランド」で知る音ゲー曲、”HardRenaissance”の作り方 – 楽器構成

それでは行きましょう!

HardRenaissanceらしさと試聴

まずは繰り返しになりますが、

ハドルネらしさと、「アナザーランド」のシンセリフフレーズを軽くおさらいしましょう。

HardRenaissanceらしさとは?

まず僕の思うハドルネらしさとは以下のような感じです。

  • Hardcore由来の高速BPM四つ打ちリズム
  • 時折キックの連打キメが入る
  • ピアノ・ストリングスなどの生楽器で壮大な雰囲気がある
  • シンセリードの音程が上下へ派手に動き回る
  • リードメロディ付点八分のリズムがある事が多い

そして前回はこの内、上の三つをはじめとする

楽器構成を中心とした解説を行いました。

一方でハドルネらしさにはリードがかなり大切なので、今回のようなボーカル曲では、

ボーカルが休むイントロ・間奏・アウトロこそがハドルネらしくなる、という話をしました。

アナザーランドのシンセリフたち

今回はシンセリフのメロディに注目するということで、

上記のハドルネらしくなるパート3つを全て試聴していきましょう。

イントロ

間奏

アウトロ

前回は小節数が標準的で構成もシンプルな間奏のみを取り扱いましたが、

今回からはこれら三つの違いも含め、ハドルネのリードをバラしていきます。

アナザーランドの3か所あるシンセリフはそれぞれ違った構造をしていますが、

制作時は「イントロ→間奏→アウトロ」の順で作っていったので、

その順番にならって今回はイントロを解説していきます。

実際のHardRenaissance

他のEDMがそうであるように、

ハドルネに関してもリフの構造が曲展開に伴い変わっていくこと多くないと思います。

やはり「これまでと同じパターンで踊れる」というのは結構大事なので、あまり常道からは外れません。

一方でJ-Coreの一種かつArcade Coreという事もあり、

雰囲気がどんどん変化盛り上がる様に展開していく形を取られるケースもあります。

今回は特にネットに上げる曲なので、基本形から大きく外れてでも

どんどん変わっていく形で注意を引ける曲展開を意識しました。

イントロを6小節にした理由

イントロが6小節になっていることについて、違和感を覚えられた方もいらっしゃると思います。

やはりパートの長さが4小節の倍数で無い時はハッとさせられるため、

イントロで耳を引くという狙いもありました。

ただ本当の理由は、このリフに入る前

落ち着いた中で順番に一つずつ音が鳴っていく部分

ここをどうしても入れたかったのですが、すると歌詞が始まるまでが長くなってしまい、

ネット音楽のトレンドとして不利になるのを恐れ、2小節端折ったからでした。

イントロのメロディを解剖!

では早速、イントロのメロディを見ていきましょう!

※分かりやすいように、レイヤーした2本のうちVitalのみを鳴らしています。

打ち込んだメロディはこんな感じです。

ポイント①:ポルタメントでルート音へ上げ下げ

まずハドルネのメロディにおける大きな特徴は、

こちらでハイライトされている、

下に配置された音たちです。

これらを

  • 付点八分以上の長さの音符の下に
  • 8分音符1個分後ろから
  • 次の音符までの長さで
  • その時鳴っているコードのルートの位置

という条件で配置します。(一部例外あり)

更にシンセの設定で、ポルタメントもしくはグライドさせます。

ボイスを1に下げるなど「モノフォニック」にすることも忘れずに!

※プリセットから”Lead”を選んだ場合は元からこんな感じになっていることが多いと思います。

これによってポルタメントで上下にうねうね動くようになります。

試しに低い音が無い場合を聴いてみましょう。

伸ばしがそのままで、明らかに寂しい感じがしますね。

また、モノフォニックやグライドが無くても変になります。

ポリフォニック&グライド無し

リードなのに複数音が同時に鳴ってしまうので、パッとしません。

また「次の音符までの長さで」という条件も結構雰囲気に影響します。

例えばこんな感じで次の音符に重なる様に伸ばすと、

下がる時だけでなく上がる時にもポルタメントが掛かってうねうねします。

これが欲しい時はこれでも良いのですが、クドくなるリスクもあるため僕は基本しません。

 

一方で、幾つかの例外も紹介します。

まず、低い音をコードのルート音にしないケースから。

例えばメロディラインがそもそもルート音に近かった場合、

近いままでも、もっと下げようと1オクターブ低くても不自然になります。

その場合はルート音に拘らず、コードの構成音内であればどの音でもあまり違和感は出ません。

実際にこの曲でも、ルート音までは下げてなかったりします。

試しに全部上げてみました。

真ん中のは音が接近し過ぎて違和感もありますが、

逆に最後に関しては悪くないんじゃないでしょうか?

 

お次は気になってる方も多そうなこの音符!

「4分音符なのにうねらせてないじゃん!」って話なんですが、

これは「伸ばすことに意味がある音符」なのでそのままにしています。

ここまでうねらせると、まーまーダサいことになります。

ズッコケますね。

この辺の感覚はハドルネがどうというより、

そもそもどんなリズムモチーフの曲にしたいかという事から決めています。

今回はこの部分で「バーッ」と伸ばすリズムにしたいためうねらせていません。

お次は「じゃあそのリズムモチーフをどうやって決めるの?」という事をお話ししていきます!

先に八分音符主体でリズムを決める

では、そもそものメロディのリズムの決め方について。

僕はメロディを考える時、先にリズム面だけで考えてから音程を付けます。

同時に考えてしまうと、どうすれば良くなるか訳が分からなくなってしまいますし、

リズムって音程ほどは選択肢が多くない上に、

メロディ全体のイメージを左右しやすい印象があるためです。

音程だと、メジャー/マイナースケールなら最低7つの選択肢があり、オクターブ上を加えれば更に倍になります。

何ならスケール外の音を使う可能性を考えればもっと増える事もありますね。

挙句に音程から考えたとしても、

リズムや音符の長さが変化しただけで印象が大幅に変わるのはよくある事です。

一方のリズムの場合、よく動かすメロディなら長くても2分音符よりは短く

短くても16分以上の長さにしないとメロディとして聴き取れません。

少なくともハドルネに限って言えば、使う音符の長さは

  • 4分音符
  • 8分音符
  • 16分音符
  • 付点4分音符
  • 付点8分音符

5種類くらいになります。(最後の方で伸ばす場合を除く)

メロディのスケッチを描く際にはこれを更に絞り、

4分音符8分音符の2種類だけにしちゃいます。

その上で、音程に一切動きを付けないで打ち込めば、

メロディの元となるリズムモチーフの完成です!

これがイントロ前半4小節のリズムを簡易的にしたものです。

元はこんな感じで、最初は「タン、タン、タン」とシンプルな4分音符

その後8分音符でシンコペーションさせて…という感じでラフな感じでリズムを組んでいきました。

あとはこの表拍の4分音符うしろにさっき説明した低い音を追加したり、

8分音符の一部を16分に変えたりします。

4分音符ばかりだと流石に退屈しますが、8分音符が加わると十分な疾走感が出せます。

逆に16分音符は、BPMが速いためあまり入れ過ぎない方が良いと思っています。

メロディをまとめるリズム

一方で後半のこの部分、

ここは最初から付点8分音符で組んだリズムでした。

また前言撤回しててツッコミたくなるところですが、

これはいわばキメのリズムを考えた結果生まれました。

この部分はリフの5小節目にしてリフが終わる2小節前です。

先ほども言った通り、リフが6小節なのは間延びさせずリスナーを引き付けるためでした。

ですが、それが6小節が終わるタイミングで分かる様では遅いと判断し、

5小節目からメロディをまとめ、「もうすぐリフが終わって歌が始まるよ」というメッセージを忍ばせたく、

このタイミングで畳みかけるリズムを入れました。

こういったハッとさせるリズムは、幾らか変則的だったり小難しいものが望ましいため、

シンプルにして考えない方が良い場合が多いかな?と思います。

音程の動かし方

さてこれでリフのリズムが決まりました。

これらに音程を付けましょう!

個人的にここがトップクラスに苦手なのですが、

難易度を大幅に下げる手法を紹介します!

それが先にコードを決めちゃうです。

コード進行を先に付ける

「それがムズいんだよ!」という意見もあると思いますがご安心を。

こちらが今回使ったコード進行です。

これだけで気づいた人は凄いかも…?

分かりやすいように、コードと度数も。

G♯mE  – F♯  –  Gdim  - G♯m  – E  – BM7

Ⅵm    – Ⅴ   – Ⅴ♯dimⅥm ⅠM7

(度数はメジャーキー基準としています)

お判りでしょうか。

実はこの前半部分は、

かのEvansのリフ前半全く同じ(移調したもの)です!

Q.パクっちゃっていいの?

A.良いんです。

コード進行はそもそも、かなり縛りがキツく

かなりの確率で別の曲と被ります

相当変な事でもしない限りオリジナリティあるコード進行は作れず、

むしろ何かと被っている進行の方が良いことが多いです。

なので「この曲良いな」と思ったらその進行をそのまま持ってきちゃってOK!

慣れてきたらアナザーランドの後半の様に、

一部を変えるなどすればなお良しですね!

コードを先に決めた理由

コード進行が決まったら、それを軸にして音程を決めましょう。

こうするとかなり楽に無理のないメロディを作りやすいです。

理由の一つは、コード進行は縛りがキツいから。

もう一つは、メロディがコードと合わない音を出し過ぎると違和感が出るから、です。

先にメロディを、7つのスケール音からざっくばらんに選んでしまうと、

それに合うコードが限られてしまう挙句に、

合うコードが出来ても、コード進行が不自然になるリスクが高いです。

先に制限の厳しいコードを決めておくことで、この危険を回避し、

無理のないメロディを作りやすくなります。

コードの構成音からメロディの最初の音を選ぶ

ではメロディの音を選んでいきましょう。

最初のコードはG♯mです。

新たなコードが鳴り始めた時は、メロディもなるべくその構成音を鳴らしましょう。

構成音はソ♯・シ・レ♯ですので、選択肢は3つです。

全体がG♯マイナーキーで出来ていますので、このG♯から始めると雰囲気が安定します。

最初はG♯としました。

特にフレーズの最初の音は制限が多いです。

基本的に、メジャーキーでいう所の

Ⅰ・Ⅲ・Ⅵ の音から始めましょう。

少なくとも僕はそうでない曲を今の所知らないです。

これらはトニックコードのルート音に当たるため、

メロディの始まりとして自然なんだと思っています。

さて次の音ですが、二つ目以降についてはもう少し自由にできます。

今度はコードの構成音と半音でぶつからない音を選びます。

今回はスケール内で一つ下の音にしました。

頭の中で「タ↑ラ↓ラ→ラ↓ラ↑ラ↓」というイメージがあったのも理由の一つです。

 

一方のこの音、

この音は「今なっているコード」とは半音でぶつかりますが、

次のコードの構成音になっているため、予告としてここで使っています。

 

こんな感じで、コードに合う音を探っていきましょう!

コツの一つは、ペンタトニックスケールを基本とする事。

これらは多くのコードと違和感なく調和しやすいのでとても使いやすいです。

もう一つは、コードペンタトニックにない音を使っているなら、その音を使ってみる事。

この部分を例に見てみましょう。

ここは、F♯mGdimと上がっていく特にエモい部分です。

これらはドミナント系のコードであり、ペンタトニックにはない、

メジャーキーで言うⅦ度の音(ここではラ♯)が含まれています。

そのため、試しにメロディもラ♯にしたところ、いい感じにエモく耳をくすぐるフレーズになりました。

この部分ですね。(一瞬ですが…)

補足:付点八分の少なさについて

ここまでで、リフのリズムとメロディラインを作ってきました。

と言っても、このイントロと間奏はハドルネメロディの特徴の一つたる、

  • 付点八分のリズム

を踏襲していません。

これは、BPM182というテンポの速さであまり複雑なリズムを強調し過ぎると、

理解しづらい、聴きづらさにつながる可能性を危惧したためです。

リスナーとして想定されるのは音ゲーマーというよりボカロやそれこそ沙花叉さんのファンかな?と思って作ったため、

そちら側に合わせたというのが理由の一つです。

更にそれを後押ししたのが、幾つか参考にしたハドルネでも、

付点八分を使わないケースが見られたためです。

例えば以前も紹介したこちら。

ボーカル曲という事もあってか、ハドルネらしさこそありつつも、

リフ部分は常に8分音符をメインにしている少し珍しいリフです。

またこちらも、前半部分が当てはまりますね。

BlackY – Marion

同じアルバムですがこちらはインストです。

こちらも8分主体のリフとなっているためとてもリズムが分かりやすく、踊りやすい感じがします。

後に同じモチーフだけど付点八分が増えて暴れ出す

3:32辺りからのラストのリフとの対比が顕著に表れていますね。

まとめ

イントロだけで結構なボリュームとなってしまったので今回はここまで!

いかがだったでしょうか?

メロディ作りは僕も苦手で、色々調べてきてはいるのですが、

調べても変になる事が多く苦戦していました。

ですが今回紹介したコツ、

  1. リズムを決める
  2. コード進行を決める
  3. 音程をコードに合わせる

を使うと、

パズルや作業の様に、センスに頼らず着実にいい感じなメロディを生み出せると思います!

ぜひ試してみてくださいね!

それでは、オヤカマッサン~

次回は間奏・アウトロ編です!