皆さんごきげんよう。IWOLIです。
自作曲解説シリーズ、「アナザーランド」編の第3回です。
前回はハドルネのメロディを作る方法について解説しました。
一方でそちらではイントロのみを扱い、大部分が4分音符か8分音符のみで完結しました。
今回はそこから発展させ、間奏やアウトロでどのようにメロディを変化させたか、
特にアウトロでの暴れ方について解説します!
それではいきますよ!
Contents
アナザーランドのシンセリフ聴き比べ
まずはこの曲のシンセリフを比較し、
どのように変化したかを確認しましょう。
まずイントロがこちら。
もう散々聴いたパートですね。
一方間奏・アウトロがこちらです。
間奏
アウトロ
ではこれらの違いを幾つか挙げていきましょう。
まず、イントロと間奏での変化は
- 小節数が6から8に伸びた
- 伸びた事に伴ってメロディが追加されている
- 後半部分のコード進行が違う
このあたりでしょうか。
小節数が違うので2個目と3個目は当たり前とも言えますが、
逆に言えばここは「8小節にする為だけの変化」をしたと言えます。
一方、イントロ・間奏からアウトロは結構変わっています。
- 転調している
- メロディの動きが細かくなっている
- 最後2,3小節のメロディが上がっている
- 最後のコード進行がイントロ・間奏どちらとも違う
- リフ前の助走(アウフタクト)を入れると9小節
- 最後のキメ「君が良いんだ」も合わせると10小節
このように、メロディとコードだけを見てもとにかく激しくなっていたり、
変化を強調した部分になっています。
ここから実際に、どのようにしてこの変化を作ったのかを見ていきますよ!
間奏でのメロディの追加
一つ目は比較的分かりやすい、
間奏で追加されたメロディについてです。
レイヤーを切ったリード部分だけで聴いていただきましょう。
打ち込みはこんな感じです。

一方のイントロの打ち込みがこちら。

前半部分は全く同じなので、後半部分にフォーカスしてみましょう。

上が間奏で伸びた後半です。
こんな感じで、長さが倍になっていますね。
ここで意識したのは、
- 後半に入る5小節目で変化に気づかせる事
- そこから4小節の長さに辻褄を合わせる事
- 変化したコードに噛み合う事
と言った感じです。
変化に気づかせる5小節目
まず5小節目の冒頭部分。
ここがイントロでは付点8分音符になっており、
8分主体のリズムからの変化でキメになっていました。
一方の間奏ではここもあくまで8分音符単位で動かし、
明確なキメではない事を示しています。
と言っても、これまで通り過ぎてはつまらないので、
シンコペーションさせるタイミングをずらして変化を付けています。

矢印の部分からシンコペーション、裏拍に切り替わっています。
前半では4拍目裏からだったのに対し、
後半では2拍目裏からなので少し早く、軽い変化にはなっていると思います。
4小節の長さにする
ここから長さを倍の4小節にするわけですが、
割と単純なやり方で対処しました。
5小節目の2拍目裏から始まっているシンコペーション。
つんのめったリズムになっているので、これを表に戻せばキリが付いた感じがしてキメや締めになります。
逆に言えば、裏拍を続ければ「まだちと続くんじゃ」感が出ます。

今回はこの通り、始まったシンコペーションをもう1小節続けることで終わりを遅延させました。
ただあんまり続けるとしつこいので、7小節目では裏拍ではあるけど、
全音符サイズの長さで引っ張る事で対処しています。
イントロや間奏の終わりなんかでよくある、
ロングトーンで落ち着かせてからAメロで入るようなパターンですね。
そのまま静かに入っても良かったのですが、
イントロでのモチーフを繰り返して分かりやすくするべく、
ラストにはイントロ同様「ジャジャン!」というキメで終わらせています。
コード進行に合わせる
リズムが決まったらコードに合わせましょう。
イントロでのコード進行はメジャーキー基準で考えると、
G♯m – E – F♯ – Gdim - G♯m – E – BM7
Ⅵm – Ⅳ – Ⅴ – Ⅴ♯dim – Ⅵm – Ⅳ – ⅠM7
という感じでしたが、間奏ではこれを伸ばし
G♯m – E – F♯ – Gdim - G♯m – E – F♯– G♯m – BM7
Ⅵm – Ⅳ – Ⅴ – Ⅴ♯dim – Ⅵm – Ⅳ – Ⅴ – Ⅵm – ⅠM7
としました。
メロディもこれに合わせて出来るだけ沿うように音を選んでいます。

アウトロでの変化
お次は最後の見せ場!アウトロです!
リード部分のソロがこちら。
暴れてますねぇ~
打ち込みはこんな感じです。

まずそもそもアウトロはキーが全音上、即ち2半音上がって
A♯マイナーキーとなっています。
そのため間奏のメロディをA♯マイナーに移調したものと比較します。

上がアウトロで変化したメロディです。
イントロ→間奏に比べると色んな所が変わっていますが、転調以外の変化をまとめると
- 付点8分音符が増えた
- 16分音符が増えて細かく動くようになった
- フレーズ冒頭に助走が追加された
- 最後のメロディのまとめ方が変わり、伸びた
と言ったところでしょうか。
それぞれについて解説していきます。
一部を付点8分音符に変える
まずは何と言ってもこれ!
ハドルネをハドルネたらしめる重要な要素ともいえる、
付点8分のリズムで動くメロディになったことです。
これはほぼ全域にわたって、8分主体だったものが置き換えられています。

前半部分だとこの枠で囲われた部分が付点8分になりました。
1~2拍目は変えずに、3~4拍目で「タータータ」のリズムを入れる感じです。

後半だと更に多く、2小節の間ほとんどを付点8分が占めています。
ここで注意すべきなのは、メインの音が付点8分になるため、
下へうねらせる音のタイミング・長さが変わる、ということです。
以下は間奏部分でのメロディを移調したものです。

ここでは8分や4分だけだったため、下の音符は8分の裏であれば問題ありませんでした。

一方のアウトロでは、上の音符のリズムが変わるので、
下の音符も16分まで短くしたり、タイミングをずらしています。
この8分主体で作っておいたリズムを付点8分化する手法は
個人的にハドルネなどを作る上で凄くオススメしたい方法です!
最初から付点8分という、16分音符の裏を含んだリズムだと、
出来る事が多過ぎてリズムがとっ散らかる恐れがあります。
複雑過ぎて結局どういうメロディなのかが分かりにくい、
というのも問題になり得ます。
僕の場合、一見複雑に聴こえるのに
「なんか聴いたことあるメロディに似てる…」という現象に苛まれました。
この時、メロディをシンプルなリズムに置き換えると、
どこでどのような動きをしているのが似て聞こえる原因かが明確になります。
他にも、しっくりこない変なメロディを改善するのにも役立ちます。
短くなって余った部分には、これまで同様にコードの構成音を加えると、
違和感なくリズムモチーフだけを変えられるでしょう。
16分音符を増やす
お次は16分音符が増えた件について。
付点8分の様にうねらせるのではなく、短い音で刻み、
忙しないリズムを作ります。

見ての通り至る所に散りばめられています。
今回は8分や付点8分のうねりと16分の刻みの合わせ技を強調したかったため、
大体2小節ずつを区切りに、後半で16分音符が暴れるような構成にしました。
ここでも増やした音はコードの構成音をメインとし、
アルペジオのような感じで打ち込みましょう。
意識した所は、ただ連打するのではなく、
16分音符の裏拍、シンコペーションを強調すべく、
表拍を意図的に抜いていることですね。

この辺りで拍の頭に音がないため、
「タッタラッタララ」と言ったスキップするようなリズムが生まれています。
冒頭に追加された部分
ここはそこまで重要ではないですが、変更点として、
アウトロに入る寸前に「タラ↓ラ→ラ↑」という
アウフタクト、助走が追加されています。

これは無くてもよかったのですが、
1コーラス目終わり→間奏ではボーカルが尾を引いて間奏に被っているのに対し、
ラスサビ終わり→アウトロでは一旦ほぼすべての楽器が止み、
静かになった所からアウトロになだれ込みます。
そんな中でいきなり16分の刻みだらけなのが来るのも唐突かな?という考えから
激しくなる前に予告としてこの16分音符4連打を加えました。
最後のまとめ方
さて、最後の部分の変化ですが、ここは今までの
「ジャジャン!」という2連打のリズムではなく、
「ジャジャッジャン!」とか「ダダンダン!」って感じになっています。
このリズムも結構聴きますよね。
曲の終わりでドラマーがクラッシュシンバルをミュートする感じです。
ここはハドルネがどうというより、歌を作っていて最後は
「君が良いんだ」と叫んで終わらせたかったため、
「良い」と「だ」の3文字に合わせた形です。
むしろ本格的にハドルネらしくしたい場合、このリズムは分かりやす過ぎる気もします…。
アナザーランドの終わり方は、完全にボカロやJ-POP路線に寄せた感じですね。
コード進行も最後だけはかなりメジャー感が強く、あまりハドルネっぽくない様に思います。
コード進行について
ではそのコード進行の話に移りましょう(ゴリ押し感)。
ここでは実際のコードは重要ではないと思うので、
メジャー基準での度数表記で説明します。
前回説明出来ていなかった、イントロの進行も合わせて解説しますね。
イントロのコード進行
イントロでは以下のような進行でした。
Ⅵm – Ⅳ – Ⅴ – Ⅴ♯dim – Ⅵm – Ⅳ – ⅠM7
コードの種類ごとに色分けしてみました(目に痛い色ですみません…)
まず前半4小節のコード
Ⅵm – Ⅳ – Ⅴ – Ⅴ♯dim – Ⅵm
ここについてはEvansと同じとお話ししました。
6度に始まり、dimを挟んだ4-5-6進行です。
一方後半2小節は、
Ⅳ – ⅠM7
となっています。
直前の6度から4度に移ったのち、1度のメジャーセブンスで解決しました。
短い間で解決しないといけないので、4-5-6のような長さは入れられない事と、
5-1のような強すぎる流れで「オラッ!メジャーキー喰らえ!」みたいな事にはしたくなく、
むしろこの部分はこれから始まる、
「卒業」というポジティブともネガティブとも言い難い複雑さをテーマにした雰囲気に合わせるため、
ちょっと飲み込めない感じを出すべく、4-1という流れにしつつ、
敢えて複雑な響きのメジャーセブンスを使って、
答えの出しきれない感じにしたつもりです。
間奏のコード進行
お次は間奏のコード進行です。
といってもこちらはかなりシンプルです。
※切り替わりのタイミングが分かりにくかったのでキック付きです。
度数はこんな感じ。
Ⅵm – Ⅳ – Ⅴ – Ⅴ♯dim – Ⅵm – Ⅳ – Ⅴ – Ⅵm – ⅠM7
前半は一切変わっておらず、後半についても、
これはただの4-5-6-1進行です。
4小節あるので時間は十分と判断し、
イントロで盛り込めなかった完全体を入れた感じですね。
4-5-6-1進行好きなんですよ。
アウトロのコード進行
最後のアウトロです。ここはちょっと捻りがあります。
ここもリズムが分かりやすいようにキック付きです。
ロールうるッせぇ
度数はこんな感じ。
Ⅵm – Ⅳ – Ⅴ – Ⅴ♯dim – Ⅵm – Ⅳ – Ⅴ – Ⅵm – Ⅱ♭7 – Ⅰ
Ⅱ♭7でピンと来た方、いらっしゃるでしょうか?
ここがアウトロのキモ、裏コードです。
詳細は省きますが、コイツはⅠ度の音に解決できる、
ドミナントであるⅤ度に近い性質を持ちます。
これを入れたいきさつは、アウトロ後の歌詞「君が良いんだ」が決まった事に由来します。
このフレーズの都合、アウトロを作る上でコード的な解決のタイミングが、
間奏の8小節目ではなく9小節目になってしまうため、
1小節分伸ばす必要がありました。
コードの解決を遅らせる方法にはsus4などもありますが、
丁度裏コードの資料を読んだことで、
「覚えたてだけどねじ込んでみよう!」と思い立った結果、
このような形で案外綺麗に収まってくれた気がします。
問題点として、メロディやリズムが「ダダンダン!」というリズムで
ただでさえ分かりやす過ぎる終わり方になっているのに、
コード進行を裏コード→Ⅰ度への解決としたことで、
とんでもなく明るく分かりやすいポジティブな終わり方になり過ぎてしまいました…。
この締めくくり方は自分にとっては誤算だったのですが、
「ネガティブに見えるテーマでも、最高の終わり方を」
と言わんばかりの締め方として、ヨシとして世に出しました。
ヨッシーだけに(厄介holoXer)
まとめ
以上、アナザーランドのリフについて更に解説しました。
お疲れ様でした!
前回まででもある程度ハドルネらしさは解説してきましたが、
やはり今回解説したようなリズムの複雑さがあってこそ、
「まさにHardRenaissance!」という感じが出せると思います。
こんな感じの曲を作ってみたい方は試してみてくださいね!
それでは~オヤカマッサン~
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