皆さんごきげんよう。IWOLIです。
前回はSynth1のOSCについて解説しました。
今回は”Filter”セクションについて、省略していた部分も踏まえより詳細に解説していきます。
シンセ全体の中でも特にツマミが多いため尻込みしてしまいそうですが、
一つ一つ理解していきましょう!
Contents
基本機能のおさらい
まずは「Synth1で音作り編③」にて紹介した基本的なFilterの使い方をおさらいしておきましょう。
Synth1ではFilter専用のエンベロープ、ADSRが備わっています。
そしてこれがFilterの”frq”、即ちカットオフ周波数にアサインされています。
そこで”S”や”frq”のツマミを単体で動かしても、効果はほぼありませんでした。
これはカットオフ周波数がエンベロープの動きに従って
”amt”ツマミの方向へ開閉する仕組みとなっているため、
サステインやカットオフ周波数だけ下げても、常時ほぼマックスでFilterが開いてしまうのが原因でした。
そのためFilterを働かせるには最低でも、
- SUSTAIN:”S”
- カットオフ周波数:”frq”
を両方変えておく必要があり、
更にFilterを動かすには、
- ATTACK:”A”
- DECAY:”D”
のどちらかを変える必要があります。
”S”、”frq”、”D”を変えた場合
RELEASEは鍵盤を「放した後」の挙動であることから、
その効果を実感するための設定が更にひと手間かかってしまいます。
慣れないうちは”A”か”D”が分かりやすいでしょう。
これらを踏まえて、今回は別のパラメーターも見ていきましょう!
アマウント:”amt”ツマミ
カットオフ周波数の移動量や方向を決めるツマミ、
アマウント:”amt”を見ていきます。
これがプラス側、右向きの時は、
周波数が高い方へ移動したあと、SUSTAINの位置まで下がってきます。
マイナス側、左向きの時はその逆、
周波数が低い方へ移動した後、SUSTAINの位置まで上がってきます。
先ほどはプラス側を確認したため、マイナス側の動きを見てみましょう。
このように”amt”を左に振り切ると、
”frq”の位置から低い方へ移動するようになるため、
”frq”は高めに設定する事で変化がはっきりと表れます。
また直感的に分かるかと思いますが、
”amt”の値を小さくすれば動きの幅を小さくでき、
”0”にすれば全く動かなくなります。
- ”frq”=カットオフ周波数の基準値
- ”amt”=周波数の動く方向・量
- ”ATTACK(A)”=鳴り始め、”frq”から”amt”分上がる(または下がる)までの時間
- ”DECAY(D)”=”A”で上がった所から”S”まで下がる(または上がる)までの時間
- ”SUSTAIN(S)”=”D”での移動先。設定値により、”frq”から”amt”の方向へ上下する。
レゾナンス:”res”ツマミ
”frq”についてはこれまで説明している通りなので、
お次は下の段、”res”について解説します。
これはResonance(レゾナンス)共振といい、
”frq”で設定した周波数部分を強調します。
説明だと分かりにくいと思うので動かしながら聴いてみましょう。
こんな感じで、”res”をあげた状態で”frq”が動くようにすると分かりやすいです。
”res”を上げると「ミョ~~ン」という、何とも言えないけどシンセらしい音になりますね。
またこれをマックスまで上げると、元の音とは違うピッチの音が「キュイイイイイン」と鳴ってきましたね。
この時どんな音が鳴っているのか、EQ(イコライザー)を使って可視化してみましょう。
エンベロープでカットオフ周波数が下がってくるように設定した状態で、”res”を変えたもの
”res”を上げることで、Filterによって削られる「崖」の部分が持ち上がっており、
マックスの時はそれが一番高い「山」になっているのがわかりますか?
この機能はとても個性的なシンセらしいサウンドの一つ、
アシッドサウンドを作る時などにとても重宝します。
サチュレーション:”sat”ツマミ
お次は”sat”ツマミです。
これはSaturation(サチュレーション)と言います。
直訳すると「飽和」というみたいですが、
DTMやシンセでは専ら「歪み」と呼ばれます。
アンプやディストーションと同様に、
「音を歪ませて倍音を付加し、存在感やパワーなどを与える」機能ですね。
こちらも変化を確かめてみましょう。
”sat”を上げると、音がビリビリした感じがしますね。
このパラメーターは特に”res”を上げていると音色が劇的に変わります。
最早別物な音になりましたね!
これは先ほども見せた”res”によって強調された音域が、
”sat”で歪むことによって生まれた音です。
流石に両方マックスにしたものはメロディなどを奏でるのには使えませんが、
逆に効果音を作る時などはとてもお世話になるものになっています!
これまで紹介した”frq”~”sat”を、
今まで触れてこなかった波形、ノイズに適用する事で、
以下のような効果音を作ることができます。
ノイズには音程がないため、
「ピシュウウウウン」というような音が下がっていく音は、
Filterのカットオフによって表現します。
更にレゾナンスやサチュレーションによって動画のような、
雷やレーザーのような効果音を生み出すことができます。
キートラック:”trk”ツマミ
一番右下のツマミ、”trk”を見ていきましょう。
これはKey Track(キートラック)と呼びます。
これまではどの鍵盤を押しても同じ周波数でFilterが機能していましたが、
”trk”を上げることでこれを
- 高い鍵盤を押せば高音域でカット
- 低い鍵盤を押せば低音域でカット
という臨機応変な変化をさせることができます。
一見地味な機能ですが、これは”res”を上げているととても分かりやすいです。
1オクターブずつ変えて、”trk”が0の時とMAXの時を比べてみます。
0の時は、”res”で強調される音が一定でしたが、
MAXにすると強調される音も1オクターブずつ変わりました。
これは特に、アルペジオで使いたいなど、
幅広い音域で一定の音を出したい時などに重宝する機能です。
フィルタータイプ:”type”ボタン
”trk”ツマミまででFilterのツマミは全て説明しました。
お次は一番右端にあるボタン、”type”です。
これはフィルターのタイプを切り替える部分です。
”type”ボタンもしくは下に並ぶタイプ名をクリックする事で切りかえられます。
これらを変えることで、Filterが倍音をどのようにカットするかを変えられます。
試しに切り替えてみましょう。
それぞれ違う音が鳴りましたね。
何が違うのか順番に解説していきます。
LP12
一番上にあるのは”LP12”、
LPは”Low Pass”の略で、「低い帯域を通す」という意味です。
”12”は、”frq”から先の倍音を濾す時のスロープ、傾斜を表します。
この傾斜については次の”LP24”で解説するとして、
ここでは”LP12”は「高い倍音を削り(ハイカットとも言う)、
低い倍音のみを通す(ローパス)フィルター」と覚えてください。
LP24
お次は”LP24”フィルターです。
こちらは同じローパスですが、傾斜角が「24」になったものです。
ここでフィルターの傾斜について、またVitalを使用して説明します。
LPフィルターとは設定した周波数から上を削る機能を持つため、

このような感じになっています。
このグラフの、

この斜めの角度を表すのが、”LP12”や”LP24”などの数字部分、”12”や”24”です。
上記の”LP12”に対して、

こちらが”LP24”です。
カーブの下がり始めは大体同じですが、24の方がより崖が急斜面になっていますね。
つまり”LP24”は、同じカットオフ周波数でも、
高い倍音がより急激に削られる性質を持ちます。
このためLP24のフィルターを使用すると、
LP12よりも若干暗いサウンドになります。
また急激に倍音が削られるため、”res”を上げた時の音色変化を感じやすい傾向にもあります。
HP12
次の”HP”はヒットポイントではなく、
”High Pass”、即ち「高い倍音を通すフィルター」です。
傾斜は12のため、一番上の”LP12”と傾斜だけは同じですね。
その性質上、倍音ではなく基準となる最低音、
「基音」の方から削る機能を持つため、そのまま使うと芯の無い音になったり、
音程感が無くなってしまうなどの弊害があります。
このHPフィルターはどちらかというと、効果音などで積極的に音を加工し、
メロディなどで使わない音に使われる傾向にあると思います。
或いはワブルベースなど、倍音成分の変化にこそ意味がある音色、などでしょうか。
エフェクティブに音を作っていく時などに使用する、
少々マニアックなタイプのフィルターです。
BP12
4つ目の”BP12”です。
これは”Band Pass”の略で、”frq”の帯域付近のみを通します。
言い換えると、高い音も低い音も削るということです。
基音もいくらか削られるタイプではありますが、
このBPフィルターを”res”も上げて使用すると、
「アシッド」と呼ばれる独特な癖のある音色が作れます。
なんかこの感じ、名前は言えないけど聴いたことある感じがしませんか??
この音色はLPやHPでも出ないような不思議な感覚を呼び起こすことが出来るため、
様々な電子音楽においてよく用いられます。
またHP同様にBPフィルターも、効果音作りにも効果的ですね。
LPDL
最後は”LPDL”タイプです。
冒頭に紹介したものと同じローパスタイプですが、
傾斜角や”res”を上げた時の挙動に一癖加えられた、
「ダイオードラダー型」と呼ばれるフィルターです。
”LP24”以上に倍音が削られる暗い雰囲気を持つのに加え、
”res”を上げても低域が確保しやすい、ベース向きの特性になっているようです。
ベロシティトラック:”vel”ボタン
最後に紹介するのは”type”の左下にあるボタン、
”vel”ボタンです。
”vel”はVelocityの略で、DTMでは一般的に音の強弱を表します。
「鍵盤を弾く時の速さ」というパラメーターだったものが、
実質的に強弱を意味したために今では専ら「強弱」といった意味になったようです。
この”vel”をオンにすると、フィルターの”amt”、
即ち、エンベロープでのカットオフの移動量がベロシティによって変わるようになります。
ベロシティを極端に変えたMIDIを打ち込み、
”vel”のオンオフで聴き比べてみましょう。
”vel”がオフだと何も変化せず同様にカットオフが動いていますが、
”vel”をオンにすると、ベロシティが小さい時だけ、
カットオフがほとんど動かなくなりました。
これは特に曲中で、フィルターの動く量をノート単位で変えたい時などにオンにしておき、
動きを小さくする部分でベロシティを下げる様にして打ち込むことで活用できます。
まとめ
ということで今回は以上です。お疲れ様でした!
ツマミだらけでイメージしづらい所もあったかもしれませんが、
この記事でシンセの音作りの敷居を少しでも下げられたらうれしいです。
今回作ったアシッドサウンドやフィルターを大きく動かすリード的な音以外にも、
例えば爆発音に近いような効果音もフィルターを活用する事で生み出せたりしてとても楽しいですよ!
それではまた次の記事で、オヤカマッサン~!
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