ボカロ曲で学ぶ音楽理論-リズム編02:16分音符の話 ~”魔法少女とチョコレゐトの巻

皆さんごきげんよう。IWOLIです。

ボカロ曲で学ぶ音楽理論シリーズ

リズム編の第2弾ということで、今回は

8分音符より細かいリズム、

16分音符についてお話ししていきます。

結構テンポが速く、ついていくのが大変かもしれませんが、

理解すると楽曲のノリが分かりやすくなったり、

作曲でも効果的に複雑なリズムを作れるようになると思いますので、

是非参考にしてくださいね!

それではいきましょう!

魔法少女とチョコレゐトのサビリズム

今回もいつも通り原曲のリズムを確認していきましょう。

0:44辺りからがサビですね。

テンポ自体フォニイより遅いのですが、

畳み掛ける歌詞のお陰でむしろ速く感じられるかもしれません。

その秘訣に迫ります!(探検番組みたい)

タイトルが長いのでこれ以降は「魔法少女」と呼ばせていただきます。ご了承を。

魔法少女をリズムだけで考える

ではこのサビメロディをリズムに注目して調べてみましょう。

こちらがサビの冒頭部分、

「はぁ正直もう ~ やめたい(2回目)」までです。

こちらが打ち込んだMIDIデータです。

これだけではリズムが分かりにくいので、

またクラップを重ねてみます。

「パンパパパン」というリズムが印象的ですね。

MIDIデータを見てみましょう。

ここで、前回は4分音符と8分音符に分けましたが、

今回で言うと4分音符は、今ハイライトされている部分だけです。

実際には2つ目と3つ目の部分は

歌詞が「やめたい」の「たい」に当たるのですが、

歌では「1つ分の音符の中に母音をもう一個詰める」というテクが良く使われます。

今回はそこを踏まえ、たい」で一つの4分音符と解釈しています。

そして8分音符はこちらです。

歌詞では「正直」の「」、「もう」、

「魔法少女を」の「」「」「う(お)」「」「」がそれぞれ8分音符にあたります。

そして、更にその半分の長さの音符がありますね。

こちらが今回の主役、16分音符です。

歌詞では「正直」の「」「」、

「やめたい」の「」「」があたります。

魔法少女のサビ始まり

この歌はサビが始まる一拍前に「はぁ…」という溜息の歌詞が入りますよね。

このような、小節の一拍目以外から始まる事を

アウフタクトまたは弱起と言います。

ただ今回は見た目にも分かりにくくなってしまうので、

これ以降はこの「はぁ」を除いて解説します。

音を詰め込める16分音符

詳しく16分音符の長さを見ていきます。

こちらは、4分音符でキックを加えた物です。

MIDIはこのような感じです。

16分音符の部分をハイライトしています。

前回で、4分音符は「1小節を4分割した長さ」と説明しました。

そこから考えると16分音符は、

1小節16分割した長さ」となります。単純ですね。

また言い換えれば16分音符は、

4分音符4分割した長さ」ともいえます。

今回のMIDIを見ても、4分音符一つ分の中に、

8分音符一つと16分音符二つが収まっています。

音楽って割と算数みたいな事多いんですよね。

これだけ見ればとってもシンプルな話ですが、

この16分音符を活かすことが楽曲に面白さ

耳を惹くアクセントを生むきっかけになります。

16分音符の活用法①:音符を詰め込む

①つ目の活用法はシンプル、

音符を詰め込む際に16分音符を活かすパターンです。

魔法少女でいう先ほども確かめた、

「正もうやめたい」などの部分ですね。

このパターンの場合、16分音符になっている部分は

16分二つを8分音符に置き換えてしまっても普通に成立します。

試しに聴いてみましょうか。

MIDI(メロディ)


MIDI(リズム)

比較用の原曲メロディ

どうでしょうか?

単調にはなりましたが、「一度下がった後、上がって終わる」という

フレーズの骨組みは大きく変わっていません。

言い換えるとこの手法は、

4分音符8分音符だけで作ったフレーズの

一部を16分の連打に変えるだけです。

そのため例えば、

正直もうやめたい」と、続く「魔法少女をやめたい」の「(まほ)う少女をやめたい」の部分は、

メロディの動き自体は同じですが、「」と「」が同じ位置にあるため、

」は16分音符、「」は8分音符で嵌めこまれています。

作者のピノキオPさんがどのように生み出したかまでは分かりませんが、

先に作ったメロディでは「正直もうやめたい」という歌詞が余るため、

」の部分を16分音符に変えて詰め込んだ可能性はあります。

このように、歌詞を詰め込みたい場合でも、或いはちょっとリズムにクセを付けたい場合でも、

この音符を詰め込むための16分音符はとても簡単に利用できます。

16分音符の活用法②:裏拍で刻む

②つ目は少し複雑になりますが、これも魔法少女で使われています。

それは16分音符の裏拍です。

前回の4分と8分の話で挙がった、シンコペーションの発展と言えますね。

先に実際に使われている部分を聴いてみましょう。こちらです!

(アウフタクトの「Я」は除いています)

この「らりぱっぱら…」の部分ですね。

メロディのMIDIを見てみましょう。

ハイライト部分が16分音符です。

(前回同様、伸ばさない部分は16分の長さにしていますが、16分音符としてはカウントせずにいきます)

そしてハイライトしていないものは8分音符に当たるのですが、

以下でハイライトしたノートに注目してください。

それ以外の8分音符との違いが分かりますか?

分かりやすいように、8分音符刻みで縦線を入れてみました。

どうですか?

そう、ハイライトしたノートは「16分音符一個分後ろにずれている」んです。

前回のフォニイでも、「あたしってなんだっけ?」の「なんだっけ?」の部分は、

4分音符の表拍のリズムからずれ、4分音符のキックの間に配置されていました。

魔法少女ではそれが、8分音符の表と裏で生まれています。

これにより、かなりつんのめった、スキップするようなリズムが生まれています。

「らりぱっぱらっ ぱっぱっぱらっぱ」という細かい刻みにとてもフィットしていますね。

なので、ここはこの裏で刻まれたリズムがとても重要になっています。

試しにこれを8分にしてしまうと?

MIDI(8分音符)

MIDI(16分音符)

この通り…さっきとは比べ物にならないくらいつまらないリズムになりました。

というかこれだけじゃ何の曲のフレーズかわからないレベルですよね。

このように16分の裏拍は、それでしか生み出せないグルーヴがあるテクニックです。

ただし同時に、リズムがかなり複雑になるため、

これを使う場合は以下の2点に気を付ける必要があると思っています。

  • 音程の動きを最小限にする
  • BPMを速くても160までにする

まず音程については、このテクでリズムが難解になっているので、

音程まで激しく動いてしまうと聴く側が追いつけなくなってしまいます。

実際に魔法少女のフレーズでも、16分の裏部分は音程が一定ですね。

そしてBPMについては、人間が認識できるリズムやタイミングの限界から、

余りに速いテンポで複雑なリズムを作ってしまうと、

ズレているのかそういうリズムなのか判断が付かなくなります。

魔法少女のBPMは150となっており、リズムを理解するのもさほど苦労しないテンポに収まっています。

逆にこの曲のリメイク元である「腐れ外道とチョコレゐト」の場合、

かなり高速に聴こえるとは思いますが、

Я らりぱっぱらっぱっぱっぱら!」のリズムも含めて、

BPMを260として解釈すれば8分音符になっています。

BPM260で16分はマジで聴き取れないと思います()

といってもキックの頻度も考えるとBPM130と捉えられなくもないですが…

この辺は作者の意図と聴き手の解釈次第だと思います。(完全にガバ、HardcoreなのでBPM260でも間違ってないと思いますが)

16分音符の活用法③:上下に動き回る

さて③つ目の活用法ですが、

これは少なくとも魔法少女・腐れ外道どちらにおいても、

ボーカルにおいては使われていません

というのも、この手法はボーカルパートにとっては

歌うにも聴くにも不向き過ぎるからです。

このテクニックは、細かいメロディが奏でられる楽器(ピアノなど)で

16分音符で激しく上下に動き回る、というものです。

ピアノなどは鳴らした瞬間にハッキリした音が出ますが、

例えばバイオリンやパッドシンセのような鳴り始めが穏やかな楽器

トランペットのような音程のコントロールが難しい楽器

ボーカルのような、「子音+母音」で成立するパートではとても不向きです。

魔法少女ではイントロで鳴っている「コロコロしたシンセ」がこの手法と言えそうです。

冒頭の「テンテンテンテンテンテンテレレレ↓」という部分や、

歌が始まってから後ろでコロコロと鳴っているのが分かるでしょうか?

こういった音で使えば、ボーカル以外のパートで16分のリズムを生み、

疾走感などが生まれます。

まとめ

いかがでしたか?

今回は魔法少女とチョコレゐトのメロディから、

16分音符の概要と活用法について解説しました。

結構複雑な所もありましたが、これを活かすことが出来ると

より個性的なリズム・メロディを生み出すことができます!

是非、色んな曲で16分音符のリズムを探したり、

演奏、作曲などを通して活用してみてください!

それでは、オヤカマッサン~

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