皆さんごきげんよう、IWOLIです。
今回は作曲メソッド解説と自作曲解説を掛け合わせ、
過去に紹介したメロディの作り方を
拙作「アナザーランド」のAメロ前半を例に具体的に解説します。
メロディの作り方は以前に解説しましたが、
「本当にこれで曲が作れるのか?」という疑問に対し一例を示せればと思います。
Contents
メロディの確認
まずは原曲のメロディをガイドボーカル単体で確認します。キーはG♯マイナーです。
冒頭のアウフタクト(弱起)に始まり、
リズムを繰り返しつつも時折変化や跳躍のあるメロディになっています。
ここから、更に詳しく見ていきましょう!
キーの選び方が絶妙ですが、
これは各キーに移調した時の雰囲気と
実際に歌うミクさんが得意そうな音域を考慮した結果です。
最初はもっと高いキーでしたが、(ここでは低めですが)
最終的にサビを作った結果かなり音域が上がってしまったため、
雰囲気との兼ね合いでG♯マイナーに落ち着きました。
リズムと参考曲
上記の記事と同じく、このメロディも最初にリズムを決めていきました。
前半をリズムだけにするとこんな感じです。
冒頭の「タ タン タ タン」だけシンコペーションし、
それ以降はシンコペーションのない、割とシンプルなリズムかなと思います。
最近(だけではないかもしれませんが)ボカロ界の傾向として、
意外とシンプルなリズムを使った歌が多く、この歌もそれに倣った形です。(参考動画↓)
この動画には無いですが、例えば人マニアやオーバーライドもかなりリズムがシンプルですね。
人マニア – 重音テト
そしてお気づきでしょうか、
アナザーランドAメロのリズムがオーバーライドAメロとやたら似ていることに…
どんだけ好きやねん
参考にするとはいえここまでこの曲に寄る想定では無かったのですが、
このようなリズムに至った経緯も合わせて次で解説します!
歌詞を踏まえたモチーフと没メロディ
ここでヒントに利用したのが歌詞です。
過去記事で「歌詞は後」と解説していましたが、
ここでは歌詞は断片的にリズムを決める取っ掛かり部分だけを作ります。
歌詞の微調整や、良いものを作るために没を出すことを厭わないなら、
リズムを決めるためのヒントが欲しい時にちょっとだけ歌詞を考えるのはアリだと思っています。
制作時の頭の中
という事で当時の思考を振り返ってみます。
最終的なリズムと歌詞の組み合わせを思いついた時の思考は、
「歌い出しはとても具体的で叙事的にしよう」というものでした。
影響を受けたのは米津玄師さんのピースサインです。
この歌い出しって印象的ですよね。
「いつか僕らの上をスレスレに 通り過ぎていったあの飛行機を」
「不思議なくらいに憶えてる 意味もないのに なぜか」
物凄く具体的で、飛んでいく飛行機や青空が目に浮かぶ様です。
個人的にこのイメージしやすさを取り入れたいと思った結果、
当時の冬の朝をイメージした「寒い 寒い 起きれない」という、
いくらかネガティブにも取れる日常から始めました。
そうなると、「寒い 寒い」という繰り返しがリズムとして利用できそうです。
そこからヒントを得て、8分音符一つ分手前から始め、
シンコペーションしながら折り返すリズムとしました。
没になったメロディ
とはいえこれが最初から生まれていたわけではありません。
最初は全く違う歌詞とメロディが生まれていました。
それがこちら。
※リズムが分かりにくいためメトロノーム付きです。
前の小節の2拍裏から始まる、かなり長いアウフタクトがあったり、
かなり様変わりしていますね。
イベントの名前にある通り、この時の歌い出しは
「探しに行く」というものでした。
6文字あるため、その内5つを手前の小節に入れた形です。
これほどの弱起はあまり多く思いつかないのですが、
例えば名曲「Tell Your World」が近いでしょうか。
この歌の場合はこのリズムが凄くきれいに当てはまっていますが、
こちらはシンコペーションの多さやBPM、イントロの綺麗さなど、
全体のバランスが取れているので成立していると思っています。
一方僕の曲の場合、BPMも速い上に直前が忙しいシンセリフのメロディ、
加えて直後のメロディ(リズム)の組み立てがうまくいかなかったため、
そもそものリズム・歌詞自体を没としました。
シンコペーションと作曲難易度
ここまで何度も「シンコペーション」という言葉が出ていますが、
シンコペーションの頻度や使い方は作曲の難易度や曲の方向性に大きくかかわってくると思っています。
シンコペーションの多い曲
シンコペーションが多いとリズムが複雑になるため、
リズムだけで個性や癖、ノリを出しやすい印象があります。
その代わり勝手に複雑になってしまう分、
メロディ面などでバランスを取らないと難解すぎるメロディになる恐れもあるでしょう。
ボカロ界では難易度の高さからか、特にベテランボカロPでの採用が多い印象です。
「吸っちゃっていいの?」「いっぱいで吐きたい」など、裏拍が強調されています。
冒頭の「らりぱっぱらぱっぱっぱらっぱ」といい、
「可愛い衣装まとって」に始まるAメロといい、
とてもピノキオピーさんらしい、16分音符のシンコペーションラッシュです。
歌う時結構苦戦しそう…
懐かしめの曲からもひとつ。
かなり速いBPMで、特にサビのシンコペーション連発が強烈です。
「イカサマライフゲイム」の「サ」で裏拍になったあと、
シンコペーションが止むのは「揃えた」の「そ」です。
シンコペーションの少ない曲
一方シンコペーションが少なければ、
とてもシンプルで分かりやすいリズムにすることができます。
分かりやすさ・キャッチーさが取柄にはなりますが、
同時に単純過ぎて幼稚さや退屈さに繋がるリスクを何とかする必要も出てくるでしょう。
2020年代を代表する若手ボカロPは、シンコペーションの少ないシンプルなリズムに、
あの手この手のメロディや印象的な歌詞で勝負している傾向を感じます。
Aメロを中心に、中々シンコペーションが来ないリズムですね。
あとは既に紹介した人マニア・オーバーライドもかなりシンコペーションが少ない代表例です。
アナザーランドで採用したリズム
これらを踏まえて最終的にアナザーランドは、
時折シンコペーションするけど基本は表拍メインの8分音符で構成しました。
特に前半4小節はキャッチーにするべく、
2小節のリズムパターンをループさせています。
ノートを移動させると、リズムは完全一致しますね。
後半4小節はリズムを大きく変え、シンコペーションも増やして変化が付いていますが、
ここでももう一回繰り返したりシンプルに作っても良かったかなと思います。
リズムに音程を付ける
さてリズムが決まったので、ここにどうやって音程を付けたか解説します。
ここも以前解説した通り、決めておいたコード進行にある程度沿わせて作るとスムーズです。
今回はAメロをⅣ-Ⅲ-Ⅵm-Ⅰ進行にしています。合わせてみるとこんな感じ。
まあ結構合ってない部分もありますが。
例えば小節の最初や重要な音をコードと噛み合うようにするなどして配置すると、
違和感の少ないメロディがスムーズに作りやすいと思います。
まとめ
ということで今回はアナザーランドのAメロ前半を使って、
実際にどのようにメロディを作っていったのか解説してきました。
まだまだ不慣れでもっとスムーズにかつ綺麗に作れた所もあるかもしれませんが、
「リズムから作る」「コードに合わせる」など、具体的に項目を絞って組み立てるように作る戦略は、
再現性や真似のしやすさから、閃きなどで作るよりかなり難易度が下がると思っています!
試してみてくださいね!
それでは、オヤカマッサン~
コメントを残す